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アカデミックディベーター

Author:アカデミックディベーター
日当たりの良い某法科大学院を2009年3月に卒業。
ライフワークである競技ディベートについてぼちぼち書いています

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第20回JDA秋季ディベート大会の感想~抽象的な政策方針をCounterplanでどう論じるか~
どうもご無沙汰しております。最近業務が立て込んでいたため全く更新できておりませんでした。夏の中学論題についての記事リクエストも受けているのですが、ちょっと後回し、となりそうです。

では何を書こうかということで、やはりJDA秋季大会ということになります。この大会では、Kritikを回した意欲的なチームの活躍が印象に残っており、これはいずれきちんと取り上げたいと思っているのですが、Kritikについてはそのチームメンバーが大会までのプレパを踏まえた本格的な記事を連載中であり、こちらのクオリティが非常に高いため、まずはこちらに委ねようと思います(ちなみにその他のディベートの記事も面白いです)。私が付け加えるとすれば、私が考えるKritikの理論的・実践的な困難性と、これまで見てきた日本語ディベートの議論シーンを踏まえた活用可能性といったところになると思います。
ということで、以下では、難民認定基準緩和論題の否定側が用いている資金提供Counterplanをネタに、Counterplanの考え方について少しお話ししようと思います。実は、今年のJDA大会では決勝のチーフジャッジという大任を務めており、そこでも少しだけお話ししたのですが、そこでのお話しの内容を、若干詰めて展開するということになります。

まず、前提として、難民論題における資金提供Counterplanの概要を説明しましょう。
この論題における肯定側(Aff)の一般的ケースは、日本の難民認定基準が世界的に見ても不合理に狭く、日本に来た難民が十分に保護されていないという議論を展開します。この議論を全部否定することはかなり困難で、否定側(Neg)としては何らかDAを立てたいのですが、犯罪増加や難民元の国との外交悪化といったDAはどれもいまいちで、Affがきちんと仕事をするとこれでは勝ちきれない、という状況にあります(北朝鮮問題など、近隣諸国での紛争に絞った議論にすればいろいろ問題は立てられそうにも思いますが、その場合もAffに有利な考え方ができそうで、やはり詰めるときつそうな気はします。)。
上記のような状況のもと、Negの苦肉の策として考え出されたのが、日本で難民を受け入れる代わりに、その分のお金を難民キャンプなど、ほかの受け入れ先への資金援助に回すというCounterplanです。日本のような先進国での受け入れにはコストがかかるので、それよりも途上国のキャンプにお金を入れたほうがコスパがよく、多くの難民を救える、という話です。
どうも、最新のプレパ事情では、お金だけ出すという姿勢が途上国に評価されておらず限界があるという話が有力そうで、どうも厳しそうではあるのですが(決勝でも出ていて投票理由に寄与しています)、以下では、その話は措いて、理論的なところを少し詰めてみましょう。

このCounterplanの面白いところは、Counerplanの具体的内容がAffのプランに依存しているということです。すなわち、Affのプランにより増加する難民受け入れの費用を全部資金提供に使う、ということなので、資金提供に使われる金額は、Affのプランで予想される受け入れコストの増加分に依存することになります。これに基づき、Negは、同時採択を主張するAffに対して、Affのプランに要する費用を全部資金提供に回さないといけないので、Affプランとの同時採択は不可能であるということを言います。
ただ、この議論を競合性の話として理解するのは、容易ではありません。NegのCounterplanだって、どこかの段階で、Affのプランから見込まれる追加コストによって資金提供額を具体化する必要があり、そのような規模の資金提供と、難民受け入れを両方行えばよいと考えることもできます。具体的には、AffのPermutationの内容として、Negが適当と考える額の資金提供+Affのプランを同時採択するということを提案することができ、Negにおいて適当な資金提供額を特定できないのであれば、Counterplanとして具体性を欠き投票理由にならないのではないか、ということを主張することができそうです。Counterplanに具体性がいるのかどうかという話はありますが、少なくとも、論題を否定する積極的理由として議論するためには、Negにおいて現実的に難民政策に割ける予算の枠を示し、その枠内では資金提供のほうが効率的であるとか、難民受け入れは著しく非効率なので常に資金提供のほうが望ましいことを示すといったことが必要になるでしょう(少なくともAffから要求され得る)。

また、このCouneterplanは、通常のCounterplanと異なり、ケースで論じられている内因性に対する解決性を持っていないことにも注意を要します(実は、その部分については、希望すれば難民キャンプに送るという別のプランが存在しているのですが、決勝では実現可能性に疑問ありとされました)。つまり、日本に来た難民ではなく、世界全体の難民を救おうという、別の話を持ち出してきているわけです。ここを放置して議論を進めると、かみ合わない感じになってしまいます。

こう考えると、Negによる資金提供の議論は、通常のCounterplanと少し異なる説明方法によることが分かりやすいように思われます。後者の、内因性と違う問題を論じている点については、いわゆるCounter-goal counterplanという、別の目的を解決するためのCounterplanを提示しているものと整理することになります。この手のCounterplanで勝つためには、元々のゴール(Affケースのimpact)より自分たちのゴールのほうが重要であること、Counterplanで自分たちのゴールを達成できる(Affのプランでは達成できない)ことを示す必要があります。もっとも、両方のゴールを達成すればいいということで同時採択を主張されかねないことは通常のCounterplanと同じなので、競合性の立証も必要になります。
というわけで、結局問題が戻ってくるのですが、今回のような資金提供Counterplanが言わんとしているのは、同じお金を使うなら全世界の難民救済という別のゴールに使うほうがいいのだということですので、具体的なプランではなく、資金の使途についての抽象的な方針を論じることになります。このような場合には、最初からCounterplanという出し方をせず、Affのプラン(ひいては論題)は難民救済の方法として間違っており、より異なるアプローチによるべきだということをより端的に述べたほうが分かりやすいかもしれません。

上記に基づけば、例えば、以下のような構成の1NCが展開できそうです。

1.Affケースのインパクトへの疑問:Affのプランは日本に来た難民の処遇しか論じておらず視野が狭い
2.取るべきスタンス:難民問題は世界的であり、場所に限らずより多くの難民を救う政策をとるべき
3.Negの支持する政策方針:難民受け入れの緩和による日本での受け入れではなく他国での受け入れに対する援助に注力すべきである
4.Negの支持する政策方針により実現されるメリット:①世界での難民対応費用の不足(内因性)、②そのせいで難民が苦しんでいる(重要性)、③プランで想定される規模の金額でできること(解決性)
5.Affの方針との競合性:①国際貢献の予算は限界があり、難民対応費用も限られているので、日本での受け入れと他国への資金援助はトレードオフである、②日本が現実的に拠出できる資金の範囲内では日本での受け入れより他国への資金援助のほうが効率がいい



上記議論のキモは、日本が目の前の難民申請者でなく世界的な難民に目を向けるべきなのかという1・2の部分と、5の競合性の部分です。ただ、決勝戦の議論を見ると、5のように整理し直した競合性の証明は結構うまくいきそうです。ということで、本質的な問題は、1と2の議論(と、4の解決性。金だけでよいのか?)ということになりそうです。
個人的には、資金提供Counterplanはここが一番苦しいのではないかという気がしています。いくら金を払ったところで、自国に来てしまっている難民を不当に排除してしまっているという事実(もしあれば)は解決しないわけで、それ以外の難民が救われているということでそのことが正当化されるのかということには疑問があります。競合性のところで「予算的にトレードオフ」ということを主張されていることについては、Affからは、難民受け入れの増加分は有限かつそこまで巨額ではないから、国際貢献の枠を増やしてでも追加で行うべきで(フィアットの範囲で同時採択的な追加プランにすることもできる)、日本にspecificに生じている難民受け入れ義務は世界の難民問題とは別に履行すべきということを言われてしまうと、Negとしては苦しかろうという感じがあります。こう考えると、結局、整理した結果上のほうで見た競合性への疑問の話に回収されるわけですが、同時採択できるかどうかという次元で議論するよりは見通しが良いのではないかという感じはあります。

以上、いまいちまとまりを欠く感はありますが、言いたいこととしては、Counterplanの3要件という基本的な考え方はあるものの、特殊な意図を持つCounterplanの場合には、展開・構成の方法に工夫の余地があるのではないかということでした。Affの側から見ても、Negが言いたいことをうまく整理することで、どこが反論のポイントなのかということを洗い出すことにつながります。JDAでも、上記のようなAffの反論は見られなかったところで、Affとしてはさらに仕事をすることもできただろうということを思っています。
[追記:本記事を書いてすぐ、JDA準決勝のトランスクリプト公開がはじまり、その中で弁士の3PチームのNegが上記に近い議論をやっていました。実際には負けてしまっているわけですが、どのような理由で負けるのかが気になるところです。ケースもよくできており、非常に良い試合の予感がします。]
[さらに追記:そのあと上記準決勝の2ACに接したところ、キモとなる部分への反論が出そろっており、これは厳しいなぁという感じでした。Negもよく議論していたとは思いますが…。]

ともあれ、(論題のサイドバランスにはいろいろ議論があるようですが)以上のようなことを考える余地のある工夫された議論が出ていたことについては、20周年記念大会にふさわしい、実りある大会だったと思います。改めて選手の皆様に敬意を表して、本日の記事を終わることにします。

大学・社会人ディベートの記事 | 18:32:53 | トラックバック(0) | コメント(3)