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アカデミックディベーター

Author:アカデミックディベーター
日当たりの良い某法科大学院を2009年3月に卒業。
ライフワークである競技ディベートについてぼちぼち書いています

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ジャッジ入門講座(7.ジャッジとしての試合の見方)
またしても間が空いてしまいました。ディベートのコンテンツは途中で更新されなくなるものが多いのですが、この講座は何とか最後まで書ききりたいところです。今回からの後半戦は実践的な内容でもあるので、ディベート甲子園の全国大会までに目途をつけたいなとは思っておりますが、それは私の講評が時間通りに終わる可能性程度の見通しと思っておいていただければ幸いです。
ということで今日は第7回です。講座PPTの9枚目(/12)の内容に当たります。今回の内容からやや生々しい話も入り、某ディレクターよろしく解任されてしまうかもしれませんが、そこは大目に見てください。

ジャッジ入門講座 第7回

試合に臨むに当たって
ここからいよいよ、実際に試合をジャッジするときの振る舞いについて説明していきます。最初に、どうやって試合を聞くか、というところからです。ジャッジとして聞くからといって選手としてフローシートを取りながら聞くときとそう違ったことをするわけではありませんが、判定や講評のことを見通して気を付けるべきことはありますので、そのあたりを説明します。
まず、試合前の準備です…といっても、特に何かがあるわけではありません。予備知識がどの程度必要かという話は第2回で説明済みです。ということで普通に部屋に行くなり、オンラインであればパソコンの前に行くなりすればよいのですが、1点だけ注意すべきは、トイレを済ませておこうということです。当たり前のことですが、試合は長丁場であり、その中で急に催してしまうと、短い準備時間の間を縫ってトイレに行くことは困難ですし、他方で便意に耐えながら試合に集中するのは至難です。こんなことを強調しているのは、私自身何度かやらかしているからで、その時は体を揺らしながら耐えに耐えて何とかしましたが、疲労感は通常の試合の倍以上ですし、試合展開がハードだった場合にどうなっていたかは分かりません。ということで、トイレはこまめに行くようにすることをお勧めします。
筆記用具は各自の好みで使用してください。フローシートも特に決まりはありません。講評を考えたい人は講評だけをメモするための紙を追加でもっていってもよいです。私は普段はフローの余白にメモしますが、色々配慮した講評が求められそうな試合で主審をするときは別にメモを持っていくこともあります。ペンも自由ですが、肯定、否定で色を分けるほか、コメントを書き込む色のペンも準備していくとよいでしょう。私の場合、肯定は青、否定は赤でフローを取っており、バロットを書いたり講評の構成などをメモするのは黒色のペンですが、議論に雑漠にコメントする際には緑色のペンを用いたりします。緑色の文字は他人には見せられないようなことも書きなぐっていたのですが、ごくまれに、参考までにフローシートがほしいという選手がいるので、最近はそこまできついコメントを紙に残すことはしなくなりました。私も過去1、2回フローをくださいということを言われたことがありますし、初心者だと取り方の参考にしたいので見せてほしいといったことはそれなりにあります。私の字は可読性が極めて低いので読まれても気づかれないのですが、字がきれいなのにきれいでない言葉遣いでコメントをしてしまう癖のある人は選手を傷つけてしまうことが生じるかもしれないので気を付けましょう。そんな人はいないかもしれませんが。

試合中の振る舞い
スピーチ中は、まずは議論を正確に理解しようとすることを心がけましょう。フローシートは、可能であれば多く書き取るほうがよいです。特に資料については、前提条件や、語尾が「思われる」なのか「かもしれない」なのか、といった細かなところも取ると、評価の精度が上がります。最近は選手が証拠資料を著者の名前で指定したりしてくるので、出典も、年号と著者の苗字くらいは取っておくとよいです。議論を追っていく観点からは、著者名だけでなく中身も含めてサインポストしてほしいところではありますが、その辺はジャッジをしないと分からないところかもしれません。そういうことはジャッジとして選手にフィードバックしてあげてください。
慣れてきたら、スピーチ中でも議論の評価をしていくようにしましょう。「ここは飛躍しているのではないか」「この部分がよく分からない」といったことは、気づいたらフロー上に書き込んでいくと、後で判定に役立ちますし、講評で指摘すべき内容のヒントにもなります。副審であっても議論の改善点についてコメントを求められることもありますし、主審の場合、同じような観点からの疑問や不備のコメントが複数あれば、それを講評で取り上げる改善点のテーマにすることができます。ジャッジの仕事もプレパが大事だということです。

スピーチ中はフローを取るのに集中することでよいですが、質疑や第二反駁など、書き取る程度が少なめになるステージでは、選手の方を見るとよいでしょう。ディベートは選手とジャッジのコミュニケーションであり、選手のほうを見ることで、選手のコミュニケーション面での良さを見つけることもできます。また、選手の側でも、うつむいてメモを取るジャッジに向かってしゃべるより、自分の方を見てくれるジャッジに語り掛けるほうが良いスピーチができるでしょう。選手が言い間違ったりして慌てているときに、慌てなくてもいいというジェスチャーや表情をすることで、スピーチが落ち着くこともあります。その程度のことがえこひいきだということはありません。少しのことですが、ジャッジでも、良い試合を作るのに協力したいものです。

意見が分かれるのが、議論に対してリアクションをするかどうかという点です。これは個々のジャッジによって違うので「こうしろ」という答えがあるわけではないですが、私自身は、リアクションをする、しかも割と強めにする立場です。良いことを言っていると思ったらうなづき、大事な争点を話し出したと思ったら身を乗り出し、当たっていないと思ったら首をかしげます。場合によっては、首を振ったり、ペンを置いて腕を組んだり、「それはちょっと・・・」などとつぶやいたりもします。昔、NADEの某支部長級の方に「選手の議論に反応するのはよくないのではないか」と割と強めに言われたので、ややキレて「じゃあ先生は目の前に衝立でも置いてスピーチを聞かれたらどうですか」とやりあったこともありましたが、それは極端としても、ちょっと過剰なリアクションではあることは承知しつつ、コミュニケーションというのはそういうものであり、ジャッジの反応を見て議論を選択するのも選手に求められる技能の一つだという思いで、こういう立場を取っています。私が高校時代の東海支部のジャッジが、結構怖いリアクションをしていたので、そういうものかなと思っていたという原体験にもよるところです。なお、こういう立場になった背景としては、昔は正直ちょっとどうかという質のジャッジもそれなりにおり、私から見ると誤った判定がメジャーになってしまったり、講評においてジャッジ全員が同じように判断したかのような説明をされてしまうことが度々あったので、そうではないということを選手にアピールしたかった、という暗い歴史があったりもします。現在ではそのような状況はないと思いますので、その点はご安心ください。
もっとも、リアクションを取ることの弊害として、逆に選手が混乱してしまうことが稀にあるとか、否定的リアクションを多くとられた側の選手や関係者が怒るといったことが挙げられます。前者に対する配慮としては、経験の浅いチームの入った試合ではリアクションを控えめにするようなことをしています。後者は、個人的にはあまり気にしないのですが、公平性の観点から、リアクションの程度は両チームのスピーチに同程度行う、ということは気を付けているつもりです。もっとも、対面の試合であれば観客は私の後頭部しか見ないのであまり気づかないものの、近時のオンラインジャッジでは画面が観客にも出てしまうので、保護者や指導者が見たときに怒るリスクは高まっている可能性があり、そのあたりは今後考えていきたいと思っています。他方で、オンラインジャッジではなるべくジャッジはカメラオンにしてほしいという話もされており、大会主催者側でも、ジャッジの表情やリアクションも含めたコミュニケーションを一定程度期待しているということは言えるのだと思っています。だからリアクションを取れ、ということではないですが、ジャッジとしてのコミュニケーションの在り方については、皆様でも考えてみてください。

スピーチの間の準備時間は、特に慣れないうちは、効率的にジャッジをするために大事な時間です。スピーチ中に議論の評価が追いつかなかった場合には、準備時間の間に、スピーチを見直して個々の議論に必要なコメントを書き込むなどしましょう。また、準備時間の間に、個々の争点のその時点での評価や、今後の進行の見通しを考えることができると、判定をスムーズに行えるようになります。例えば「メリットの2点目は重要性が不明なのでこれは立たないな」ということであれば、メリット2の攻防はあまり重要ではなく、そこまで力を入れて聞かなくてよいということになりますし、「デメリットに打たれたターンアラウンドが強力なので、ここが残るかどうかが重要そうだ」ということであれば、その部分については判定を分ける可能性があるので以後のスピーチで特に注意して聞く必要があります。こうやって自分なりに争点の重要性を考えつつ、このままだとどっちが勝つ、といったことを毎回の準備時間でやっていくと、複雑でない試合であれば、最後のスピーチが終わった直後に判定が出ることになります。場合によっては、もっと前のステージで判定が出てしまうということもあります。
また、準備時間中には、ディベート甲子園であればコミュニケーション点、JDAなどポイントカードを作成すべき大会ではポイントをつけることになります。スピーチ直後の印象が鮮明なうちにつけるほうがよいでしょう。

その他、ジャッジとして試合を聞いている際には、証拠請求でもたついている場合に交通整理をしてあげたり、スピーチ中に相談し出すなどマナーに欠ける振る舞いをしている選手を注意したりといったこともする必要があります。マナー点を減点すればよい、というものではなく、可能であれば注意してあげて改善の機会を与える配慮が求められます。複数ジャッジの時は、主に主審が仕切ることになると思いますが、副審でも気づいたことがあったら適切に対応できるとスマートでよいです。

コミュニケーション点やバロットのつけ方
コミュニケーション点やバロットの点数をどうやってつけるか、というのは、主催者から基準が示されたりしますので、そちらを参照してください。
色々なつけ方があってよいと思いますが、ディベート甲子園のコミュニケーション点であれば、3点を中心とした釣り鐘型というか、極端な数字ほど少なくする、といった感覚で、自分なりにぶれのないようにつけるのがよいでしょう。JDAの点数は、どの辺を平均にするのか難しく、この点のジャッジ間のブレによって決勝に行くチームが変わってきたりすることもあるので何とも難しいのですが、10点満点の場合6~7点、5点満点の場合は3点を基準にして、決勝でもおかしくないレベルのスピーチに基準点より高めの点をつけるようにすると、そこそこブレなく安定するのではないかと思います。「じゃあお前はその基準で10点のスピーチできるのかよ」といわれても「(最盛期のベストコンディションなら)できらぁ!」と答えられるくらいのつけ方にするということでしょうか。
なお、コミュニケーション点だと、スピーチのきれいさ、といった印象がありますが、実際には、議論の中身も関係してくるところです。中身がかみ合わないとコミュニケーションにならないわけで、特に高い点数をつける際には、内容面の評価も必然的に入ってくることになります。勝敗とイコールではないですが、そうなってしまうこと自体は当然のことなので、特に悩む必要はありません。ただ、あくまで、相手の議論に対応した反論になっているとか、そういった限度で見るもので、議論としての強さまでを評価するものではありませんので、念のため。

ジャッジ入門講座 | 01:39:56 | トラックバック(0) | コメント(0)