愚留米の入院日記
日当たり良好の某法科大学院既習病棟を退院した法務博士の日記。しかし内容はほとんど趣味のディベートの話
論題発表とは関係なく色々と
ディベート甲子園の論題が発表されたのですが、そういう目先のことにはあんまり興味がなくなってきた年頃でもあるので、今回は論題とは関係なく、ネット上で見つけたディベート関係の情報との関係で感想をちょろちょろ書きます。最後にちょっとした告知(?)もあります。


1.どうしてディベーターはそんなに、論点の番号にこだわるんだい?(NADEルール解説に対する感想)
NADE試合運営委員会が連載していたルール解説が再開されていました。再開後の第1回はコミュニケーション点をテーマにしたものです(こちら)。
参考になる内容ではありますが、紙幅の都合でいろいろ端折っていて分かりにくいところもあるように思いますので、第三者的立場からちょっとだけ補足しておくことにします。

記事の中では「情報を明確にすることで、自分達の議論のポイントをより伝えやすくなります」というアドバイスがあります。具体的にやるべきことはいろいろあるのですが、記事の内容とも関係して一番有効なのは、現状とプラン後の対応をしっかりさせる立論構成にするということです。そのためには、メリットの説明で「現状分析」「発生過程」という言葉を使うのは止めてみるのがオススメです。内因性(論題がないことによる問題)→重要性(その問題を解決すべき必要性)→プラン(解決策)→解決性(プランが問題を解決する)、という構成を取るだけで、議論はぐっと分かりやすくなります。
これは用語法だけの問題ではありません。現状分析と称して現在の状況を平板に述べ、それと対応しないプラン一般の効果を「発生過程」として述べるというあり方自体が分かりにくいのであって、「問題があって解決すべきだから解決策を取ろう!これで問題は解決します」という論理的順序に沿って議論を整理展開すれば、必然的に分かりやすくなるということです。

「関係性を明確にすることも大切」という説明もあり、場合分けをする場合はその旨明示するという注意も書かれています。確かにその通りですが、実は議論を分かりやすくする最も簡単で効果的な方法は、そもそも場合分けなど必要ないような議論展開にするということです。本当に場合分けは必要なのか、場合分けしているのは実は証明をさぼっているだけではないのか、ということを自問した上で議論を作るという意識も必要でしょう。

一番気をつけてほしいのは、「立論で出す論点には番号を振っておくことも大事です」というくだりです。これがどういうことを言っているのかはよくわかりませんが、最近良く見る立論では、意味もなく番号をいくつもつけてブツ切りにしているような立論です。番号で議論を区切るのは、それによって議論の内容が整理されるからであって、一連の流れになっている部分をさらに番号で区切る意味はありません。例えば「1、~には地震が起きます。2、この確率は~です。」みたいな区切りはいらないだろうということです。一連の流れになっている部分は接続詞でつなげて、話が変わる部分や、並列的関係にある部分だけに番号を振るとよろしいでしょう。
あと、個人的には、反駁に番号をつけるのはあんまり意味がないような気もしています。ジャッジをしていて、反論の番号だけで議論を伸ばしたりすることはないからです。たまに「2点目…あ、3点目です」とか言ってるのを聞くと、そんなのどうでもいいから早くエビデンス読めよと突っ込みそうになる今日この頃です。

コミュニケーション点については、2009年ルール改正についての解説「コミュニケーション点に関するルールの改正について」という文章も出されており、コミュニケーション点やマナー点についての考え方が一通りまとめられているので、(自分で書いたものだから宣伝するというわけではありませんが)こちらにも目を通しておくとよろしいかと思います。

2.それはとっても厳しいなって (某ブログにあった新出議論の判断基準について)
こちらは2回立論形式のディベートに関する話題。
ESSディベートのOBで、現在JDA大会などでジャッジをしている方(ひろろろろ氏)のブログに、次のようなことが書かれています。

一方、2NC への反論として出てきた 1AR の新しい議論に対し、最後のスピーチである 2NR で再反論するのは、新出議論(ニューアーギュメント)となるので無効です。


この記事は2NCでDAを出すことの戦略的問題点について解説してくれており、個人的にも参考になったのですが、新出議論に関する上記の見解は誤っているように思われます。コメント欄にも某職業ディベーターが同様の指摘をしておりますが、以下ではその理由付けを少し補足しておくことにします。

新出議論が規制されるのは、議論の不当な拡散を防ぐことや、相手方に反論機会を確保するという趣旨によるものです。2NCで出た新しい議論に1ARが反論できる理由についてひろろろろ氏が「もし1ARで例外が認められなかったら、2NCで新しい議論を出すことで否定側は必ず勝ててしまいますから、この例外は当然認められるべきものです」と説明しているのも、このような趣旨によるものです。
ここからすると、1ARでT/Aなどの新出論点が出た場合には、これに対する反論機会を確保するため、1ARの新出議論に限っては2NRも同様に再反論できると考えるべきことになります。これを許しても、あくまで1ARの新出議論に対抗するため必要な範囲で反論を認めるだけなので、議論の不当な拡散にはなりません(T/Aの成否についての議論だから、論点自体は増えない)。要するに、ドロップもしていないのにルール上反論不能な議論が出てくるということ自体が、新出議論規制の趣旨からして不当であるということです。

では、立論で議論を出し切れということの意味はどこにあるのでしょうか。これは、勝負を決める積極的論点(AD、DA、T、CPなど)については相手方に質疑の機会を保障すべきということにあると考えられます。これらの論点については、立論段階しか出せないという形で厳格に制限すべきです(1ARの展開を見てDAのリンクを補強するなどすることは明らかにアウト)。
一方、こうした積極的論点に対する反論やT/Aというのは、積極的論点の内容を前提として、それに対するレスポンスとして出されるものですから、積極的論点の内容に照らして予測可能である(少なくとも出した側が予想すべきであるといえる)内容です。また、前提となっている議論(反論対象)そのものについては質疑の機会を経ており、あるいは自分から出した議論なのですから、そこから派生する反論等に質疑の機会を別途与える必要性は乏しくなります。ですから、こうした議論は、新出議論規制の趣旨に反しない限り、すなわち時機に後れたといえない限りで、反駁段階から提出することも許されると考えることができます。

以上とは関係ないのですが、ひろろろろ氏の記事には「DAにつけられたT/Aの処理ができないのはヤバい」といったことが書かれており、確かにそれはそうであるものの、実のところ1ARでつけられるレベルのT/Aで勝負が付くことはそんなにないという気もしています(戦略的にガチでT/Aをつけてきたら別ですが)。
氏がそうであるという趣旨では全くないのですが、ADやDAに比べてT/Aだと緩く取るとか、ドロップされたT/AがあるからADやDAをそれで安易に切るという発想は、ジャッジングにおいて警戒すべきことだと思っています。T/AもADやDAの議論を借りてきてADやDAを作るという意味で、3要素を満たす必要があるわけで、ターンという表題だけで過剰に(あるいは過小に)評価されてはならないということは、気をつける必要があるでしょう。ターンをかけに行く側としても、それを成立させたいのであれば、例えばリンクターンであれば内因性や固有性への攻撃と組み合わせるなど、相応の準備を持って取り組むべきです。まぁ多くの場合、T/AといいつつADやDAを削ることが主眼の場合が多く、それはそれで結構有効なのですが(なので、T/Aの戦略的有効性自体を否定するつもりは全く無くて、むしろ積極的に出すべきだと考えています)。

3.僕と契約して、交流研修会に参加して欲しいんだ(講習会のご案内)
最後は告知です。
来る3月19~21日、NADE東北支部において東北ディベート指導者研修会なるイベントがあります。こちらで講師をさせてもらうことになったので、一応その案内を。

今回の研修会のテーマは、議論構造や反駁についての基本的な理解と、それを前提とした反駁原稿の作成方法習得というものです。具体的には、指導者向けとされる1日目はディベートの基本についての解説と原稿検討方法の実践など、選手も参加できる2日目は午前中に反駁の方法などについて講義し、午後からは原稿作成方法の講義とそれに基づく原稿起案作業、そしてそれを使っての練習試合という盛りだくさんの内容です。
原稿作成についての講義・実践というのが今回の個人的な目玉で、司法研修所よろしく事前課題を送りつけた上で当日講評し、さらに原稿も書かせるという、NADEの講習会ではあまりなかったインテンシブな内容となっております。当日の作業は、あえて今季論題と関係ない死刑論題を用い、用意した資料集をもとに議論してもらいます。中学生も高校生も参加する講座だから、どっちかの論題を使うのは不公平だからというのが表向きの理由です。

講師が講師だけにどれだけ有意義な内容になるかは分かりませんが、少なくとも「原稿をきちんと作る」という、ディベート甲子園の参加チームに希薄っぽい考え方について知ってもらうことはできるだろうというところです。
逆に、論題の解説とか、今季有効な議論とかいうのは、あまり期待されても困るというところです。選手がそういうのを知りたがっているのは分かっていますが、すぐ役立つものはすぐに要らなくなるわけで、今後ディベートを続けていく、あるいは議論という営みをするに当たって有益になることを伝えられればと考えています。

まぁ東北なのでそうそう簡単に参加できるものでもありませんが、3連休の旅行ついでということで、物好きな人は参加されてはどうでしょうか…ということで一応宣伝でした。詳細は上記リンク先(NADE東北支部HP)からどうぞ。
あと、参考までに、事前課題の内容について下記に載せておきます。参加者にはもう少し詳しい注意事項と、参考のための書式・3要件に関する長い解説文(新書版マニュアルの該当部分)がついてきます。

【必須課題】
参加される学校(チーム)単位で、注意事項に従って、以下で指定する内容の反駁用原稿を作成してください。分量に制限は設けないので、無理のない程度で作成していただければ結構です。

1 中学生チームの課題
 (1) 「選挙の棄権に罰則を設けることで国民の政治に対する意識が高まり、よりよい政策が実現するようになる」というメリットに対する否定側第一反駁の反駁原稿
 (2) 上記(1)のメリットに対する反論のうち、「選挙の棄権に罰則を設けることで国民の政治に対する意識が高まる」という解決性の部分について攻撃された場合の、肯定側第一反駁の再反駁用原稿(論題付帯事項以外の追加プランはないものとしてください)

2 高校生チームの課題
 (1) 「原発を廃止すると地震によって発生する原発事故が起こらなくなり、その被害を避けることができる」というメリットに対する否定側第一反駁の反駁原稿
 (2) 上記(1)のメリットに対する反論のうち、「原発の周りで大きな地震が発生する危険性がある」という内因性の部分について攻撃された場合の、肯定側第一反駁の再反駁用原稿




以上、小タイトルを書きたかっただけだろうという突っ込みが来そうな内容でした。
みなさんも契約するときは慎重に…
コメント
この記事へのコメント
魔法少女では誰が好きですか?
2011/03/13 (日) 20:03:41 | URL | WATASI HA HOMU HOMU HA DESU!! #-[ 編集]
>Charlotteさま
これはこれは、魔女にご覧いただいているとは光栄です。

僕もほむほむこと暁美ほむら派なのですが、コミックスではさやかが可愛いので若干心が揺らいでいるところです。



コメント欄を借りて報告しておくと、先日の大震災のため、東北での研修会には伺えなくなってしまいました。東北の皆さまが一人でも多く助かることを願っております。
講座については、別のところで行わせていただくこともあるかもしれませんし、機会があればまた東北支部でも話をさせていただければと思っております。
2011/03/14 (月) 00:28:18 | URL | 愚留米@管理人 #tX1BiP8k[ 編集]
いつも拝見しております。
「1.どうしてディベーターはそんなに、論点の番号にこだわるんだい?」についてお聞きしたいのですが、否定側立論の構成はどういった形にすればわかりやすくなるのでしょうか?
おいそがしいところ申し訳ありません。
2012/03/10 (土) 14:48:19 | URL | 中学生 #-[ 編集]
>中学生さま
ご質問ありがとうございます。

基本的には、デメリット論証のために必要な議論を、ストーリーに沿った形で配列しつつ、ある程度まとまった話の切れ目でラベルを付したりナンバリングするということになります。
これという決まった形があるわけではなくて、たとえばデメリットについては常に固有性を述べる必要があるわけではありません(たとえば、救急車有料化で貧困者が救急車を呼べなくなるというデメリットでは、現在は呼べているという話が固有性に該当しますが、これは言われなくてもそうかなと思えるので、立論で説明する必要があるかというとそうでもないでしょう。しかし、有料化で迷って呼ばなくなり重症化するというデメリットであれば、現在は無料なので重症かどうかわからない場合には迷わず呼んでいるという固有性の議論がほしいところです)。

具体的な作業のポイントは下記2点です。
1.資料を抜いた主張の部分だけをつなげて意味が通っているか、自然な流れであるか確認する
2.上記の議論について、説明している要件が変わったり、大きく話が変わるところでナンバリング・ラべリングにより切れ目を入れる。また、ある議論からつながる独立の複数のリンクがある場合など、並列関係にある議論が出てくる場合には、これもナンバリングして整理する

とにかく、なぜそれがわかりやすいのか、どうしてそういう構成にしているのかということを、自分の頭でよく考えてみてください。
個人的には、「他のチームがそうしているから」番号を細かく振るとかいうことだけはしてほしくないところです。もちろん僕のコメントについてもそうですが、なぜそうすると分かりやすくなるのかを考え、納得したうえで議論を作ることに尽きます。

上記説明が分かりにくいとか、ほかにご質問があるとかいうことでしたら、遠慮なくどうぞ。
2012/03/11 (日) 01:22:24 | URL | 愚留米@管理人 #tX1BiP8k[ 編集]
ありがとうございます。
わかりやすい議論が作れるようにがんばりたいと思います。
また何か質問させていただく折にはよろしくお願いします。
2012/03/12 (月) 09:20:58 | URL | 中学生 #-[ 編集]
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