愚留米の入院日記
日当たり良好の某法科大学院既習病棟を退院した法務博士の日記。しかし内容はほとんど趣味のディベートの話
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今季高校論題を論じる上での若干の注意点
間が空いてしまいましたが、東海地区の高校予選や練習会でいくつか試合を見た感想として、高校論題である道州制を議論するに当たって気をつけるとよいかもしれない点を若干書いておくことにします。全国大会間近なので微妙な時期ではありますが、少しでも参考になれば幸いです。
*道州制論題で議論されるべき内容について書いた文章がNADEのサイトにもあるのでよければご参照ください


1.どんなニーズか、という問題
東海支部は相変わらず「ニーズが満たされる」というメリットが大流行でした。それは一向に構わないのですが、ここで注意すべきは、一体そのニーズはどのレベルで生じているのか、きちんと意識しなければならないということです。
具体例として様々な「ニーズ」が出てくるのですが、それは場合によって市町村レベルの施策だったり、都道府県の要望だったり、あるいはより広い地域単位の構想だったりします。自分たちが議論したいのはどのレベルで求められているニーズなのか、きちんと特定した上で、それに対する解決性を証明するようにしてください。例えば、市町村やレベルのニーズであれば、それは道州制の問題と関係あるのか(現行の地方分権の流れではダメなのか。とりわけ市町村レベルの権限委譲は道州制とは直接関係ない)という点が問題となります。
また、その「ニーズ」は役所が言ってるだけなのか、それとも本当に住民が望んでいるといえるのか…といった観点も意識されてよいでしょう。単に「ニーズがある」というだけでなく、それが住民生活に支障を来しているとか、住民自身が望んでいるといった内容が示されていると、議論の訴求力はぐんと高まるでしょう。

2.時間軸を意識させる反論を
否定側の反論として検討されるべきものとして、現行の地方分権の流れでも問題は解決するのだという、内因性へのアタックがあります。実際にそうした反論を用意しているチームも多いのですが、多くの反論は単に「いくつかの権限は既に委譲されている」というだけで、肯定側の出した例を結局否定し切れていないという不十分な結果に終わってしまっています。
これを勝負の決め手にまで高めるためには、現時点での状況を示すだけでなく、今後の分権の流れを示唆するような議論も一緒に入れることが有効です。肯定側が立論の中で「今後も地方分権は進まない」と立証していることは稀でしょうから、否定側からむしろ積極的に「分権が進む未来の話」をした上で、道州制固有のデメリットをきちんと展開できれば、かなり強い論陣を張ることができます。これは、地方分権のバリエーションとして「都道府県制を軸とした漸進的な分権」を支持するというスタンスに立つ議論であり、その他の反論もそのような筋に沿うよう組み立てることができれば、非常に説得的な立場を築き上げることができるでしょう。このようなスタンスは、否定側からも未来の話をしなければ構築できないものです。

3.そのデメリットは道州制固有か?
少なくないデメリットが、結局のところ「現行の交付税制度をやめると格差が顕在化してヤバい」という話に終始していて、道州制固有の問題を論じられていなかったりするように思います。これでは、肯定側が適切な財政調整制度を提案してきた瞬間、デメリットが死んでしまいます(あるいは将来的な交付税制度の破綻を指摘するという固有性への反論もあるでしょう)。
そこで、道州間の格差でデメリットを立てたい否定側としては、①道州制により財政調整が固有に難しくなる、あるいは②道州制のメカニズムにより格差が固有に拡大して調整しきれなくなる、といった議論を準備しておく必要があります。もちろん、他のデメリットを模索することもありです。どんなデメリットを立てるにせよ、「道州制固有の問題」とは何か、特に意識して議論を組み立ててほしいところです。

4.プランについてしっかり考えよう
デメリットとも関係しますが、格差のデメリットを準備するチームであれば、主要な財政調整制度についてはきちんと研究しておくべきです。もちろん、格差デメリットを財政調整で切りたい肯定側も、自身のプランについて意味をしっかり理解した上で、有効性の裏づけを準備しておかなければなりません。
また、よくあるデメリットのリンクに「法人税の引き下げ競争」というものがあるようなのですが、これに対する対策として、課税権をいじるというプランもありうるところです。例えばドイツは各州に独自の課税権を認めていません。こうしたプランはメリットの解決性を著しく減じる可能性もありますし、場合によっては論題充当性の問題がある(「基本的にすべての」権限を道州に移したといえるか議論の余地がある)のですが、ありうる選択ではあります。
法人税に限っても、道州制下での税制のバリエーションとして、法人税率は全国一律にするとか、アメリカで採用されているユニタリータックス制度(法人税を取るにあたり、州外や国外(!)の利益も課税対象として捉える)を導入する、あるいは法人税を財政調整の原資に充てるとか、さまざまな場合がありえます。こうしたプランについてきちんと議論するには、まずは現在の日本で法人税がどのように徴税されているのか、自分で調べて理解する必要があるでしょう。

5.基本に立ち返る
以上、いろいろ細かいことも書きましたが、何より大切なことは、自分たちの議論をよく理解し、一般的に予想される議論にきちんと対策を立てるということです。
全国大会レベルでもそうなのですが、自分たちの立論の意味を良く分かっていなかったり、典型的なメリット・デメリットに対して充実した反論(これは「証明不十分です」とかいうしょぼいダウトに終始することを含みません)を展開することができないチームというのは、全体の過半数を占めるといってよいでしょう。これは、皆さんの力不足というより、いろいろ気になってしまうあまり、応用的な問題に頭を悩ませすぎ、足元を固め切れていないだけだと思われます。
全国大会まであと3日ほどしかない直前期であるからこそ、これまで何度も聞いてきた「よくある議論」を振り返り、そうした議論に対してきちんと反論できるか確認することが大切です。そして、そうやって基本的なところを確認することで、難しい議論について見えてくるものもあるはずです。


今年は全国大会の2日目まで審判として参加する予定です。選手の皆さまが日本の政治、行政についてどのように考え、どんな説得的な議論を展開するのか、楽しみにしております。最後まで悔いのないよう、準備に励んでください。
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