愚留米の入院日記
日当たり良好の某法科大学院既習病棟を退院した法務博士の日記。しかし内容はほとんど趣味のディベートの話
NADE2012年ルール改正の短評
どうもごぶさたしております。良くも悪くも仕事が充実しているので、なかなかブログを書くこともできませんが、かえって平和でよいという話も聞きますので、こんな感じでいこうと思います。まぁ、某オンラインディベートの判定理由が講評の長さに比して貧弱すぎはしないかとか書いてもいいのですが(というか今書きましたけどw)、かといって判定を記すだけの時間もないので…。

さて、今回は、近時発表されたディベート甲子園のルール改正に関して、その意義と解釈論的問題について若干コメントしておくことにします。
ルール改正の概要はNADE公式サイトを参照いただきたいのですが、改正点は、①本則第1条に「試合を日本語で行うこと」を明記したことと、②細則B-10項において外国語文献の翻訳引用を禁じる規定を新設したことの2点です。以下では、②についてコメントします。

1.改正の意義

NADE試合運営委員会は、5月1日付の解説において、外国語文献の翻訳引用が(改正前)ルール上認められないとの解釈を示していました。しかし、実務上もそのような理解はとられていませんでしたし、細則B-5項は原典の意味内容を出来る限り保持することを前提とした引用上必要な処置(図表の口頭による紹介や翻訳行為)を禁じる趣旨であるとは解されないことから、上記解説はルールの趣旨を正解しないものと評することができます。

今回の改正は、そのような批判に対応して、外国語文献の使用を禁じることを明文で定めたものといえます。その立法趣旨は、上記解説において「外国語の文献が使用された場合、相手チームはその資料の内容の信ぴょう性に加え、翻訳の妥当性についても検証し、場合によっては反論しなければならなくなり、中高生を対象とした日本語ディベートの大会として、扱うべき範囲を超えてしまう」という政策的判断によるものと考えられます。
外国語文献の使用を一律に禁止することがディベート甲子園の在り方として正しいかどうかは議論のありうるところで、個人的には禁止しなくてもよいのではないかと考えてはいるのですが、カウンタープランを禁止するなど、議論の本筋に注力させるという方針に照らせば、判断としてはありうるところかと思います。

というわけで、改正以後の試合では、ディベート甲子園において選手が外国語文献を独自に翻訳して引用することは禁じられることになります。また、本改正により、5月1日付の解説の内容②(外国語文献の扱いについて)は、実質的にその意義を失ったものといえます。細則B-5項の趣旨については、各自改めて考えてみてください(特に、解説を読んで無批判に「B-5項で禁止されていたのか」と考えた人は、エビデンスの評価でも同じことをしないように、よくよく気を付けるようにしましょう)。

2.新設された細則B-10項に関する若干の解釈問題

細則B-10項は、「外国語の文献をそのまま引用すること、もしくは独自に翻訳して引用することは認められません。」と定めています。その趣旨は、選手が独自に外国語文献を翻訳することを規制することにあるわけですが、ここにいう「独自に翻訳して」の意義及び範囲をどう解するかという問題がありうるところです。

改正趣旨の解説においては、「原典が外国語であっても翻訳された形で公刊された(Web上での公開を含む)ものについては、 引用が禁止されるものではありません」との説明があります。ここでは、公刊されているか否かが一つの基準とされており、当該解釈はB-1項の規定とも一応整合しています。すなわち、ディベート甲子園のルールは、(それがどこまで妥当な考え方かどうかは議論の余地があるとしても)公刊されていることによって最低限の信用性が担保されるとの理解を採用しており、細則B-10項においても、翻訳の過程が公刊という行為を経て最低限の信用性を担保されるのであれば、それは「独自に翻訳」されたものではないとして、証拠としての適格(証拠能力)を認めるという考え方に立っていると理解することができます。

しかし、上記解説では、Web上での公開についても、公刊に含めて(細則B-1項の規定ぶりに合わせると「公刊物に準ずるものとして」)います。ここからすれば、選手が自分で文献を翻訳し、ブログなどWeb上に訳文を載せる(あるいは第三者に掲載を依頼する)だけで、B-10項の規制を免れることになるように思われます。
そういうものは信用性が著しく低いものとして採用しなければよいと考えることも可能ですが、少なくとも理論上は、証拠能力の問題と証拠の信用性の問題は全く別物です。後者はジャッジの裁量によるものですから、選手がブログに載せた翻訳が信用できそうだと思われる場合、ジャッジがこれを採用することは、ルール上否定されません。

では、この点をどう考えるか。詳細な解釈論は時間等の関係で断念せざるを得ませんが、大きな方向としては、B-10項の趣旨から、Web上の公開態様が試合での使用を目的とするものであると考えられる場合には、独自に翻訳されたものであるとして、B-10項の規制対象に含まれると考えることになるでしょう。これは、当該選手自身の翻訳に限らず、某職業ディベーターが公開している資料集など、専らディベートへの便宜のために公開されているものも含まれると解すべきです。

また、B-10項の例外として、「独自に翻訳」したものでない外国語文献の訳文を使用する場合には、細則B-3項の要件に加えて、出典として訳者の肩書き・名前を述べることが求められると解すべきでしょう。
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