愚留米の入院日記
日当たり良好の某法科大学院既習病棟を退院した法務博士の日記。しかし内容はほとんど趣味のディベートの話
大会直前に意識するとよいかもしれない4つのポイント
ディベート甲子園もいよいよ1週間を切りました。特に練習試合に伺う機会もなく、最新の議論を見ているわけでもないので的外れかもしれませんが、関東大会3日目の感想も兼ねて、全国大会に向けて最後の追い込みで頑張ってほしいことを簡単に書いておくことにします。まぁ、こんなところ読む暇あったらプレパしろというのが一番かもしれませんが…。

1.きちんと原稿を作る
よく言われることですが、ディベートというのは準備で9割決まります。事前にどこまで自分たちの言いたいことを分かりやすく整理し、強い論拠で固めることができたか、それをきちんとスピーチで伝えるための練習をしたか、想定できる相手の議論に対する反論を準備したか。それがすべてです。
全国大会前に限らず、ディベーターの中には、議論の戦略がどうとか、ジャッジの反応を読むのがどうとか、ちょっとカッコいい何かで勝負が決まる、ということで気がそぞろになる人もいると思うのですが、そういうのはディベートアニメの脚本で考えればいい話で、ほとんどの試合ではそういうものの前に決まります。戦略というのは戦術的な議論をきちんと展開してこそ上手く行くものですし(個々の議論がよくて全体が微妙なチームは散見されますが、その逆はほとんどありません)、ジャッジの反応が悪かったら(例えば僕はかなり反応をあからさまに示しますので、その議論はフローには取ってますが基本的には評価していないと思ってもらって結構です。)、その代わりにもっといい議論があるのですか、ということです。だったらそれを最初に出してほしいです。
*ただ、ジャッジの反応をチェックして重要度を測るというのはそれはそれで意味があるので立論を読み終わった選手はフローを取りつつジャッジを観察しているとチームに貢献できると思います。

それでは、準備というのは何をするのかということになりますが、これはもう、原稿を作るということに尽きます。リサーチも大切ですが、スピーチの短い時間にその内容を出し切るためには、原稿の形にしてまとめなければなりません。逆に言えば、原稿をきちんと作りこんでいれば(あとはある程度スピーチの練習や練習試合をしていれば)、よどみのないスピーチで相手を畳み掛けることはどんなチームでもできるようになります。
例えば、今季関東大会で見た中で一番よい第一反駁は女子聖学院高校でしたが、プレパタイムに苦労して作ったであろう反論用カードを手繰って準備をしているのを見れば、そりゃまぁこういうスピーチもできますよね、というのは納得です。ほかのチームでもスピーチは上手い選手は何人かいましたが、中身で見たら、かなりの開きがあります。そしてジャッジは、基本的には議論の中身にしか興味がありません。

作るべき原稿というのは、具体的には、立論は当然として、想定できる全メリット・デメリットについて一通り反駁をまとめた反駁用原稿と、自分たちの立論を立て直す再反駁用原稿(想定できる反駁すべてをカバーする)を作っておく、ということです。いろいろと古くなったので改訂?を要しますが、たとえばここに原稿例が置いてあります。
およそ想定できる議論に対して、4分では足りない!と思えるような反駁を準備できているかが一つの目安です。立証があいまいだとか、量がよく分からないとかいう、どうでもいい指摘でお茶を濁すのではなく、事前に練り上げてきた反駁をきちんとぶつけ合う、力の入った議論が見られるのを期待しています。

2.具体的に考える
説得力のある議論を考えるうえで一番重要なことは、具体的に考えてみる、ということです。前回も少し書きましたが、高校論題で「プランでダメな人は強制退去させるから大丈夫」という反駁が出てきたときに、どうやって強制退去させるのか、ということを少し考えてみたら、そんなプランに実効性がないであろうことはわかることです。入国時にGPS装置を皮下に埋め込むとかしたらわかるのかもしれませんが…(どう見ても人権侵害なので「いいネタ仕入れたぞ」とか考えないでくださいね)。

この「具体的に考える」というのは、要するに主張に「なぜ」「どうやって」「どんな」「いつ」といった疑問をぶつけていくということになります。建設業界に人材が足りないので外国人をほしがっているというが、具体的に「なぜ足りないのか(東京五輪とか終わったら仕事なくなってしまわない?etc)」「どんな仕事で人手が足りないのか(仕事を求めてやってきた外国人でできる仕事なのか?)」「いつのインタビューなのか(外国人の在留資格が限定されていて研修生しかない現状のアンケートで『外国人がほしい/いらない』と言っているのはプラン後に当てはまるのか?)」ということを突っ込んでいくと、反論のアイデアがいろいろ湧いてきますし、それでリサーチしていくと、議論がさらに深まっていきます。具体的な疑問を通じて、こういう議論が言えないかという仮説を立て、それを確認しながら議論を作っていくというのは、ディベートの一番面白いところであり、また、良い議論を作るために避けて通れない道筋です。

3.質疑は立論者の逃げを許さない
上記の「具体的に考える」思考を一番わかりやすく活かせるのは質疑です。外国人を強制退去させて犯罪を未然に防ぐというプランについて、具体的に「どうやって見つけるんですか?」「失業した外国人にはクビを言い渡してからずっと監視をつけるんですか?」「今も不法在留の人はたくさんいるんですよね?その人たちを見つけられていないのにどうしてプランで人を増やしたりしたら見つかるようになるんですか?」と聞いていけば、まずもって応答はできなくなるはずです。

そんなときに出てくるのが「立論では述べていません」という謎のいいわけです。質疑は立論の補足ですから(ルール本則2条2項)、立論を補足しようとしないこの回答は何の意味もなしません(ジャッジをイラつかせてコミュニケーション点を下げる効果はあります。)。
このような応答に質疑は満足してはいけません。間髪入れずに「では今ここで説明してください」「説明できないんですか」と突っ込んでいき、立論が完全に説明できていないことをアピールすべきです。そうすれば、第一反駁では「質疑で確認しましたがこの点何の説明もできていないので無視してください」というだけでその論点を吹き飛ばすことができます。

最近話題のディベートbot風に言うと
「『立論では述べていません』…そんな言葉は使う必要がねーんだ。なぜなら、オレや、オレたちの仲間は、その言葉を頭の中に思い浮かべた時には!実際に証明ができなくって、もうすでに終わってるからだ!だから使った事がねェーッ。『証明に失敗しました』なら、使ってもいいッ!」
といったところでしょうか。ちなみに僕も使ったことはありますし、証明に失敗したとは答えないほうがいいでしょう。

4.議論の機能を明らかにする
反駁スピーチや反駁原稿作りで大事なことは、その議論が試合の中でどういう意味を有するのかという「結論」を明らかにする、ということです。これをきちんとやるだけで、結構勝率は違ってくると思います。

よく言われるように、反駁では、どこに反駁するかを指摘した後で、自分たちは何を言いたいのかを述べる必要があります。反駁の四拍子と言われるものの最初の2拍です。「肯定側は○○で…と述べました。しかし、…」というところです。これをきちんとやらずにいきなりエビデンスを読まれても困ります。
まず、この2拍目にあたる「しかし、…」という部分を見直してみるとよいです。そのあとに資料を読むのであれば、その資料の一番おいしいところが分かるような前振りにしつつ、相手の議論をどうして否定しているのかが分かるような説明を作っていくべきです。そうすることで、ジャッジは、期待を持って、かつ、要点を予習した形で、資料を聞くようになります。

続いて、4拍目に相当する小括の部分も、その反駁を判定の中でどう活かすか、短く、かつ、わかりやすく示すように、工夫すべきです。この部分が欠落している反駁も散見されるのですが、それは結構もったいなくて、たとえば「現在求人難となっている職種は専門職です」という反論だけで終わっている反駁なんかは、そのあとで「プランで専門技能を有する外国人が入ってくるものではないから結局問題は解決しない」ということを指摘すれば機能するのに、そういうまとめがないために、ジャッジの中で整理されずに忘れ去られてしまう可能性があります。
きちんと反駁の結論を意識することで、反駁自体も、的外れなものを出さなくなり、質が上がるはずです。


以上、各論題の戦略的部分など、難しいところには触れず、直前期に気を付けることができるのではないかという点についていくつか書いてみました。

あと1週間は切っていますが、議論というのは、集中して煮詰めていくことでぐっとよくなっていきます。全国大会の会場で、皆さんの考え抜いた議論を拝見できるのを、楽しみにしております。
(金曜に休みを取ったので結局3日とも見に行く予定です)
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