愚留米の入院日記
日当たり良好の某法科大学院既習病棟を退院した法務博士の日記。しかし内容はほとんど趣味のディベートの話
2007年JDA秋季大会参戦記(6:JDA決勝Ⅱ[1NCとQ/A])
今日は前回に引き続いて1NC(否定側第一立論)とそれに対する質疑を見ていきます。

(注意)
1.スクリプトの内容は筆者が独自に書き起こしたものであり、誤りが含まれる場合があります。
2.サンクスワードは省略しています。また、一部編者が[]囲みで注釈やスピーカーの独り言(?)などを入れています。
3.引用された証拠資料のうち出典の分かるものについては引用部の後に()囲みで付記しておりますが、誤っている可能性もありますのでご注意ください。
4.スクリプト掲載の内容(証拠資料含む)を利用されることで発生した問題については責任を負えませんのでご注意ください。


○ 1NC
1NCは弟の担当です。余談ですが、スピーチ前のサンクスワードで兄である僕に感謝してくれたのがうれしかったです。

1回しか立論のないディベート甲子園のようなルールとは異なり、2回立論形式での否定側は選手ごとの役割分担が重要になってきます。
具体的には、1NCで単にデメリットを出すだけではなく、自分達の基本となる議論としてデメリットの骨格とメリットへの攻撃(ケースアタック)、必要に応じてカウンタープランなどを提出します。いわゆるネガティブブロック(2NCと1NR)ではデメリットのカバーとケースアタックのカバー、必要に応じて議論の追加などを行うのですが、その際には例えば、2ACでの反論を見つつ、例えば2NCでデメリットの再構築を行い、1NRでケースアタックの返しを行う…といった分担がされます。そのような役割分担を行うためにも、1NCでは基本線となる議論を反論も含めてできるだけ出してしまう必要があります。

そういうわけで、立論でデメリットだけを述べることが一般的なディベート甲子園とは雰囲気が違うということを前提に読んでいただけると、慣れない方には分かりやすいかと思います。
このあたりは新出議論の扱いとも関係するのですが、そういえばルール解説では新出議論について書こうとしたところで中断してしまっています。いずれ続きを書きたいところではありますが、年内は難しいかもしれません。

と、前置きはここまでにしてスピーチの内容を。


デメリットを2つ。

デメリットは「犯罪の増加」です。

論点1、死刑は重大犯罪に対抗できる大きな威嚇力を持ちます。
2006年にハンス・ルートヴィッヒ・シュライバーはこう述べています。
「行為者にとっての犯罪行為の利益はその害悪よりも小さくあるべきであり、そしてその行為の代わりに刑罰が科されることで威嚇されるのである。それゆえ、社会は、とりわけ、たとえば殺人のような重大な犯罪については、特に感銘力のある威嚇を用いることができなければならない。生命を脅かすことを根拠付ける死刑は、威嚇するには一番よいのである。死刑は、それゆえ殺人のような重大犯罪のために正当化されるのである。」終わり。(2006年「法哲学的視点における死刑 」『龍谷法学』39巻1号 ゲッティンゲン大学・ハンス=ルートヴィッヒ=シュライバー、龍谷大学・藤井剛訳 P127)

論点2、死刑廃止によってこうした抑止力がなくなり、犯罪が増加します。
これは近年の最新の研究で裏付けられています。
2007年6月11日のフロントラインダイアリーには次のようにあります。
「AP通信によると、コロラド大学のネイシ・モカン教授(経済学)らが2003年にデータを分析し、06年に同じ調査を見直した結果、死刑を1件執行するごとに殺人が5人減り、逆に死刑を1回減刑するごとに殺人が5件増えることが分かった。01年以降、死刑の犯罪抑止効果について数十件の研究が行われているが、いずれも死刑には犯罪抑止効果があると結論している。」終わり。(2007年06月11日 Front Line Daily「死刑は犯罪抑止に効果あり~各種調査が証明」
http://www.usfl.com/Daily/News/07/06/
0611_007.asp)
そしてですね、特に暴力団などのビジネス集団っていうのには抑止力が…死刑の抑止力が働きます。
1995年小田晋はこう述べています。
「死刑が廃止されたなら、組織暴力団の幹部は組員に、「あのタマ(標的)を取って来い。さもなければ殺す」という「究極の選択」をつきつけうることになる。「暴力団員が堅気の人間を殺しても死刑にはならないが、親分は彼を殺せるし、殺しても死刑にはならない」という状況が出現する事になる。[中略]まさかと思われるかも知れないが、あのイタリアでも、死刑が廃止されるまでは、マフィアに対抗した裁判官、検察官、政治家に犯罪学者までがこんなにあっさりと次々に殺されることはなかったのである。」終わり。(1995年「死刑廃止論の心理的検証」『変動期の刑事政策(森下忠先生古希祝賀下巻)』筑波大学教授・小田晋 P655)

そしてですね、その重要性を述べます。えーと、国民の権利を侵害する犯罪を排除することは国の義務です。
90年に田口精一はこう述べています。
「このような人間の尊厳に対する不可侵請求権は、尊厳に関する尊重の義務として、およそ一切の侵害を絶対に禁止することを求める趣旨の条項であるが、さらに進んで積極化し尊厳の維持にとって必要な保護を、国すなわち、その実施担当機関である行政府に義務づけていることである。[中略]それ故に、他人の尊厳を害するような行為を見のがし、これを放置するようなことがあってはならない。国は一般に、すべての者について、その人間の保護を保護するために、この種の生活妨害に該当する一切の行為を、排除しなければならない義務を負うのである。」終わり。(1990年「ドイツ基本法における人間の尊厳について」『基本権の理論』慶応大学名誉教授(憲法)・田口精一 P42)

次にですね、さらにデメリットを述べたいと思います。
デメリットは「再犯の増加」です。

論点1、死刑相当の事件で死刑にならず、仮釈放の後で再び殺人を犯す犯罪者がいます。
93年発行、朝日新聞死刑制度取材班『死刑執行』にはこうあります。
「日本の実例をひとつ挙げると、死刑に値する事件の被告が死刑にならなかったために、再び人を殺すというような犯罪を起こして、最後には死刑になる例は珍しくありません。」(1993年 朝日新聞死刑制度取材班編『死刑執行』P140)

論点2、最高刑を釈放可能性のある自由刑にすると、これまで死刑となって釈放されるはずのなかった危険な犯罪者が出所し、犯罪を犯す可能性が生じます。そして、その危険性はきちんと評価できません。
2002年に日本精神神経学会の吉岡隆一はこう述べています。
「Monahanは1981年これらの研究を含めて検討し「最も恵まれた環境にあってさえ・・いくつかの場面ですでにその暴力的な傾向を明らかにした個についての長期で学際的な評価がおこなわれても・・精神科医と心理学者は暴力を予言するときに正しいよりは2倍間違うように見える」と述べた。」終わり。(2002年9月20日「再犯予測について(精神医療と法に関する委員会報告)」日本精神神経学会 精神医療と法に関する委員会・吉岡隆一 
http://www.jspn.or.jp/04opinion/
opinion14_09_20_01.html)

論点3、危険な犯罪者を釈放し、凶悪な犯罪を招くことは問題です。
2001年に椎橋隆幸はこう述べています。
「次に、死刑の抑止力に関しては、特別抑止効の視点も重要である。[中略]複数の人間の生命を奪うまでは犯人に死刑を科せないという理屈を理論的に説明することは容易ではないが、何人殺しても死刑にはできないという理屈は、犯人を死刑にしておけば助かった可能性のある被害者の生命をあまりにも軽視するもので承服し難い。実際に殺人犯が仮出獄中に殺人を犯す例があるのであるから上記の事態は単なる可能性ではなく、現実の問題なのである。」終わり。(2001年5月「日本の死刑制度について」『現代刑事法』中央大学法学部教授・椎橋隆幸 P17-18)

ではケースのほうにアタックしていきたいと思います。
で、まず一点、彼らはまずですね、人間の尊厳を守るっていうことが大事なんだと、これ質疑で確認されました。そして二点目ですね、生命権っていうのは無制限に保護されるものではありません。これは人間の尊厳と異なって無制限に保護されないんです。
2006年に、えー…ギーセンコロキウムにはこうあります。えー…ゲッティンゲン大学のハンス=ルートヴィッヒ=シュライバーはこう述べています。
「したがって、憲法上の生命権は、基本法の保護の下で無制限である人間の尊厳と異なり、完全ではなく、無制限に保護されるものでもない。」終わり。(2006年「法哲学的視点における死刑」『龍谷法学』39巻1号 ゲッティンゲン大学・ハンス=ルートヴィッヒ=シュライバー、龍谷大学・藤井剛訳 P123)
そして次にですね、二点目として、じゃあ生命の侵害っていうのは人間の尊厳というのとは別物なんです。
これ2000年に押久保倫夫はこう述べています。
「内容的にも両者は区別されなければならない場合がある。例えば正当防衛では場合によっては人を殺すことも許容されるが、これは生命に対する侵害ではあっても、人間の尊厳に反するものとは考えられないだろう。死刑も、「生命に対する権利」の侵害であることは確かだが、それはまだ「人間の尊厳」にも違反すると主張するには、少くなくとも何らかの弁証が必要であろう。」(2000年「死刑廃止規定と『人間の尊厳』」『東亜大学研究論叢』24巻2号 押久保倫夫 P8-9)
まぁ彼らは生命が大事だからそれを奪うのはダメだって言ってるんですけど、それじゃ足りないんだってことを証明できていると思います。
そして三点目としてですね、人間の尊厳を重視するのであればこれ、死刑を置くべきなんです。
これは2001年に椎橋隆幸はこう述べています。
「刑罰は、基本的に過去に犯された犯罪行為に対してその重さに均衡した制裁を加えるものである。また、刑罰の基礎にある正義は、害された人間の尊厳の価値の再確認と可能な限りの現状回復を要請するとも表現できる。人間の尊厳の最も中核にある生命を奪われた場合、その価値の再確認・現状回復は損害賠償やその他の制裁によって補填できるような価値ではない。「社会における、個人の自己表現の中核である生命への尊厳を再確認する『儀式』として『死刑』という極刑が正当化される」。この説明は死刑の法的正当性を最も適切に表現していると思われる。」(2001年5月「日本の死刑制度について」『現代刑事法』中央大学法学部教授・椎橋隆幸 P19)
まぁこのようにですね、我々の立場を取ったほうがいいということが言えると思います。

じゃあ次にですね、残忍化のところを見て…いきたい、と思います。
まず一点目として、残忍化効果によって殺人を犯すっていう人は、死刑がなくても殺人を犯すんです。
これは1993年ウィリアム=バウワーズが述べた内容を和訳して示します。
「t-3の時点における死刑の影響に関して一貫して負の係数しか見出されないという事実は、少なくとも、死刑の刺激効果によって殺人を行った者たちの内のいくらかは、どちらにしろ殺人を犯すものであって、死刑の影響はそれを早く行わせるに過ぎないということを示唆する。この事実は、(死刑の)残虐化効果はすでに殺人に踏み出そうとしている人たち、自らの行為を正当性を確信し、計画と武器を持ち、そして何より殺す相手を思い定めているような人たちに特有のものであるとする考えを支持するものである。」(1993年『A capital punishment anthology』L・ストライブ編 ウィリアム・バウアーズ、ギレン・L・ピアース)
さらにターンアラウンドです。死刑は殺人の反社会性や罪の深さを知らしめ、抑止力になります。
1995年本江はこう述べています。
「人が罪の重さを知る機会はいろいろあるのでしょうが、この死刑の存在を知り、死刑を頂点とする刑の体系を知ることによって、殺人のような重罪がいかに重い犯罪であるか、いかに反社会的なことであるかという罪の深さ、罪の重さを知らされ、それを体得するのだと思います。そして、人がひとたびその罪の重さを身体でもって知るほどの驚きをもって体得してしまうと、その人生の中でなんとかしてそれに近づかないように努力する姿勢が生まれる。死刑の存在を知ることはその重要な転機になっていることは否めないように思います。そして、それが犯罪抑止力になっていることも否めないところだと思うのです。」終わり。(1995年「死刑の刑事政策的意義について」『刑法雑誌』35巻1号 法務総合研究所総務企画部長・本江威憙 P87-88)

まぁ…次に戦争のところに行ってほしいんですけど、じゃあ彼らはまず一点目として、死刑が…から戦争に行くんだって話をしていません。唯一根拠としているのは所さんの話なんですけど、これ文化的なもので…じゃあ戦争まで行くんだってことは全く言えていないと思います。[時間切れ]はい。



ケースへの対応としてはこんなものじゃないかなぁというところです。犯罪増加と再犯のDAを無難に立て、ケースは一応全体に対してアタックする…という感じです。
弟は大学からディベートをはじまたので、ディベートをはじめて2年経ってないわけですが、よく頑張ってくれたと思います。僕が原稿を作ったのがほとんどなのですが、ケースへの返しは割と任せてしまっているし、原稿の内容もかなりよく理解してくれていました。

DAについては、予選でのコメントを参考にしてヤクザの議論を最初から出すということにしておきました。後で見れば分かるように、これは成功だったわけですが、ここで勝負をかけるならもっと準備しておくべきだったというのも確かです。
何にせよ、あるレベル以上のチームと対戦すると、犯罪増加のDAはボコボコにされる運命なのですが…。その点、無期刑代替プランに対する再犯は存在自体を否定しにくい議論として機能するので、Negとしては出さない手はありません。もっとも、この試合では生かしきれなかった感があるのですが。

ケースアタックについては、人権論に対して重点的に攻撃するということは決まっていたので、生命権は制約できるというところを激しく攻撃してもらいました。本当は再生可能性など相手の論拠を逐次つぶしていくのが理想なのでしょうが、DAを2つ出した関係で時間が厳しく、1NC ではまんべんなくアタックするのが理想的だということで、この程度でとどめておいたようです。
本当は相手の議論に合わせてカードチェックしながらアタックできればよかったのでしょうが、とにかく議論を出すことが仕事の1NCではこんなものでよいのかな、と。むしろ1NRで説明しなおすというのが理想なのだと思います。それが後のほうでできていたかは別の話ですが…。

残忍化への返しはなかなか難しく、この程度が今の限界という感じです。本当は「犯罪報道が犯罪者を刺激するので、犯罪抑止を目指すことが残忍化を防ぐ最善の道」という模倣犯アタックを用意していたのですが、結局犯罪増加DAに依存するし、死刑執行による残忍化効果は否定できていないので、今回はパスしました。執行報道を禁止するカウンタープランを提示して並行的に出せば機能するかもしれません(犯罪報道は現実的に規制できないでしょう)が、そこまで大掛かりな議論を出してまで返すべきとも思われませんし。
あと、これは前回も触れましたが、Affは残忍化の起こる理由を示していなかったところ、こちらはそれを確認することなくターンアラウンドとして規範付けの議論をぶつけてしまいました。このターンは、残忍化が死刑執行による殺人の正当化によって起こるという理由付けに着目し、死刑は殺人を禁止する規範を形成する効果があるという逆の理由付けをするというものです。また、残忍化は犯罪予備軍が刺激されるだけ、というバウワーズの資料と組み合わせ、殺人に思い至る前にそれを禁止する規範を作り出すほうが優先されるべき、という比較も用意していたのですが、結局かみ合わない形で議論を提出し、そうした展開にはもっていけませんでした。Affの狙い通りになったということでしょう。

○ 1NCへの質疑
1NCへの質疑は山中さんが担当です。狙いの明確な、よい質疑だったと思います。というわけで以下、内容です。

A:じゃあお願いします。えーとまずオーバークレイムのところから行きたいと思っておりまして、刺激効果…あ、ごめんなさい残虐化に対する一点目の反論で、いやそれは遅かれ早かれやるんだっていうエビデンス読まれましたよね。
N:はい。
A:ちょっと最初の3行くらいもう一回読んでもらえますか。
N:えー…と、ここですね。「t-3の時点における死刑の影響に関して一貫して負の係数しか見出されないという事実は…」
A:はい、その後ちょっとゆっくり。そこからゆっくりどうぞ。
N:「…少なくとも、死刑の刺激効果によって殺人を行った者たちの内のいくらかは、どちらにしろ殺人を犯すものであって…」
A:はいありがとうございます。今、死刑の…ごめんなさい、殺人を行った者たちのいくらかは、どちらにしろ、それがなくてもっておはなしですよね。
N:まあそうです。
A:ではこれは何割くらいというふうにお考えなのですか?
N:何割くらいかは分からないですけど、まあどっちみち…
A:うん、はいわかりました。今のエビデンスについていうと、あなた方は、いや死刑で残忍化の人達は全てにわたってどのみち犯罪を犯すんだというふうなクレームをおっしゃったと今の証拠資料を読まれたんですけれども、これはそれを、そういうことは…
N:すべてとは言ってないですね。
A:一部ですよね。
N:いや、でもそもそも残忍化で刺激されるのはどれだけかって話をされてますけど…
A:あのー、エビデンスの内容については一部の人が、そうだったと。
N:はい。
A:二つ目に、人間の尊厳のところに行きたいんですけれども、いや尊厳が云々だというお話をいろいろ出していただいて、これは大変ありがたいんですが、がしかしですね、尊厳を、非常に抽象的な用語ですから、定義して前に進む必要があると思うんですね。で、否定側が考えてらっしゃってアタックをしてるところの人間の尊厳っていうのは、どういう定義の下で今回議論を出されているんですか?
N:まあ人間の尊厳ですよね。はい、そのままです。[会場失笑]
A:はい。で私たちの定義をしてるのは、少なくとも、法学の専門家によれば、一番目に条約で人間の尊厳を保護していて、二番目にそれは憲法の生命権にも通じるが、三番目の証拠資料で、何よりも、再生可能性があるということが生命の尊厳にとって不可欠なんだということを定義して…
N:少なくともですね、生命権と、人間の尊厳っていうのは異なるっていうことを私は言ってますし…
A:うん、それは私たちも言ってます。で、生命…尊厳っていうのは再生可能性があることが必須の条件だというのが私たちの、はい、定義なんですね。で、否定側の定義っていうのは何ですか。
N:まあ要するに、まあ例えばですね、残虐な殺され方をした人がですね、じゃあ例えばその犯人…
A:分かりました。じゃあちょっと、次に移りたいと思います。そもそもの時点で抑止効果を主張されるときにしきりにアメリカではこういうことが起こったとかいうことをおっしゃっていますよね。
N:はい。
A:えーと…ということは、アメリカの例が日本にも当てはまるのだとお考えなんですよね。
N:まあ基本的には…そうですね。
A:ということはアメリカのことをいろいろ調査なさっているからおっしゃっているのだと思いますが、
N:まあ研究…確かな研究が…
A:そこでお聞きしたいのですが、アメリカでは実際に何件くらい年間に殺人事件が起こっているのでしょうか?
N:…まあそれはちょっと分からない…
A:分からないんですか。日本と同じくらい起こっているんですか。
N:まあ日本よりは多いんじゃないですか。まあ…
A:日本より多いんですか。でも、それくらいも、ちょっと調べてらっしゃらない。
N:まあちょっと分からないですね、
A:はい。分かりました。では日本より多いような感覚はあるっていうことですかね。
N:まあ日本よりはまあいくらか多いんじゃないですか。まあどれくらいか分からないですけど。
A:はい。まあ単純な数学の話としてですね、ということはアメリカで1件犯すごとに5件だというようなエビデンスがあったときに、日本で5分の1の事件…殺人事件の数だったらこれ5分の1だと、そういう風に考えていいんですよね。
N:まあそうなんでしょう…まあ…はい。
A:じゃあ、実際どれくらい数が違うかは分からないと。
N:でも1件あったごとに5人減るっていうその効果に関してはまあわかんないですけどね。
A:はい。それは後ほどちょっと申し上げたいと思います。ありがとうございました。


最初に確認された資料の点については、前日の練習試合でこちらが同様の反論をしており、試合後の検討で話題になっていたことをそのまま指摘されたというものです。原文を読むと、some of those(いくらか)が specific(特有の)にすりかわっていて、そのあたりも怪しい資料です。原文が怪しいので、訳文も怪しくなって当然…と。
ただ、残忍化効果の起こる理由を見ると、実際には元々犯罪性向の進んだものに機能しているということは否定できないような気がします。一線を踏み越えるという意味で犯罪者が増えることはありうるのでしょうが、全く危険性のない人間が死刑の存在で暴れだす…というのは常識的にも考えがたいです。それを明確に指摘する資料は見つからなかったわけですが。

人間の尊厳の定義づけについての質問は、弟も面食らったのだろうと思います。今回のやりとりでNegがこのあたりを詰めてないという印象を持たせるのに成功していると思いますが、よく考えれば、1NCでは人権論への反論の最後に椎橋さんのエビデンスで「正義として、奪われた人間の尊厳を回復するために死刑が必要」といったことを述べており、またデメリットで犯罪抑止の必要性を述べていることからすれば、例えば「『理由もなく』生命その他重要な権利を奪われないこと」などと答えることはできたでしょう。
Affから人間の尊厳について再生可能性という具体化がされているのに対し、このあたりを丁寧にカバーしていなかったのは、この試合での大きな反省点のひとつというべきでしょう。

アメリカと日本の殺人数の違いや、そこから統計結果が違ってくるという話については、なるほどという感じでした。ただ、殺人数が5分の1だから抑止される数も5分の1というのはちょっと違うような気もします。手持ちの資料に日本での研究結果として犯罪が増えるという統計研究もあるので、もうすこし頑張ってみてもよかったかなぁと。あるいは、ヤクザの話をしているので、人口に対するヤクザの比率は日本の方が多いとか、そういう応答もできたかもしれません。


ここからAffの怒涛の反論がはじまるわけですが、これについては次回に回します。
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
“ディベート甲子園”全国大会 創価高校・中学が優勝“ディベート甲子園”全国大会 創価高校・中学が優勝http://www.seikyonet.jp/sg/Satellite?c=Page&cid=1161803072646&p=1161803072646&pagename=sp%...
2007/12/13(木) 02:50:19 | 【甲子園球場】全国夏の甲子園試合速報一番乗り!
だいぶ間が開いてしまいました。 JDA秋期大会は、無事決勝戦に進出することができ、本来でしたら、決勝戦の模様をご紹介するべきなのですが、今回の決勝に関しては、愚留米さんのブログで、トランスクリプトと、かなりつっこんだ解説が紹介されているので、このブログ...
2008/01/31(木) 13:12:03 | Tabula Rasa
copyright © 2005 愚留米の入院日記 all rights reserved.
Powered by FC2ブログ.