愚留米の入院日記
日当たり良好の某法科大学院既習病棟を退院した法務博士の日記。しかし内容はほとんど趣味のディベートの話
2007年JDA秋季大会参戦記(9:JDA決勝Ⅴ[1NR])
いつの間にか年が明けてしまいました。読者の皆さん、今年もよろしくお願いします。入院日記といいつつディベート関係者しか読まないんじゃないかという内容でお送りしているわけですが、今年からは司法試験の対策などがあるので、当初の趣旨どおり病んだ内容を書くことになりそうです。既に別の意味で病んではいるのですが…。

前置きはこのくらいにしておいて、さっそくJDA決勝の続きを見ていきます。かなり間が空き、今さら感も漂っているのですが、JDAサイトの試合結果報告に「決勝戦のレベルも高く」などという謎のコメント(まぁ相手のスピーチが上手かったことだけは確か)もついているようなので、多少張り切ってみることにします。
それにしても、恥ずかしいチーム名にしてしまったものです。分かってはいたのですが…

では、本編です。


○ 1NR
1NRは弟が担当しています。ネガティブブロックの間には準備時間をとらないというのが2立論形式での常識であり、この試合もそのようになっております。本当なら2NCとの役割分担が大切なパートで、事前の打ち合わせが効いてくるスピーチなのですが、実際はこんな感じになっておりました。

ケースのほう見てください。

なんか…我々は、まず一点目として、生命の保障は無制限ではないってことを述べました。それに対して、何か、憲法では生命の…憲法ではダメなんだってはなしされてますけど、憲法も実はですね、生命の…生命の、えー剥奪をこれ認めています。これは…昭和23年3月12日最高裁大法廷判決により明らかです。
「まず、憲法第十三条においては、すべて国民は個人として尊重せられ、生命に対する国民の権利については、立法その他の国政の上最大の尊重を必要とする旨を規定している。しかし、同時に同条においては、公共の福祉という基本的原則に反する場合には、生命に対する国民の権利といえども立法上制限乃至剥奪されることを当然予想しているものといわねばならぬ。」おわり。(最大判昭和23年3月12日刑集2巻3号191頁)
まあこのようにですね、憲法でも大丈夫なんだってことが言えていると思います。
で二点目としてですね、私が先ほど述べました、生命の侵害とじゃあ人間の尊厳の侵害はこれ別なんだ。これ全く反駁無かったんですけど、彼ら要はですね、生命が…生命権がすごい大事で、それを奪うから死刑はダメだって言ってるんですけど、それにはさらになんか何かしらの理由付けが必要だって我々言ってるんです。で、それに対して何か理由づけがあるかって言われると、無かったんで、別に人間の尊厳がじゃあ侵害されたかっていうと、そこまでは言えてないってことが確認されていると思います。
で三点目としてですね、じゃあ死刑は、じゃあ…むしろ人間の尊厳を、確認するための儀式として正当化される、ここ全く伸びてます。あ、全く反駁無かったので、ここまず伸ばしてください。で、じゃ、このあとでまたいろいろ言うんですけども。

次にじゃあ、言いたいのは……じゃあ、何か大道寺さんが、何か菊田幸一さんのなんか資料で、何か結局、死からの恐怖から解放されるから大丈夫なんだってはなしされてました。で、これについてまぁ2点ほど反駁したいと思います。
で、これに述べていた、そもそも大道寺さんっていうのは死刑囚であって、これじゃあ実際に、じゃあ終身刑になったかっていうと、無期懲役になったかというと、そうではないんですね。だからまあ妄想に基づいているって話です。
で二点目としてですね、じゃあ死刑にですね、えー…[なんじゃこれ…読めない…]まあ、じゃあ次に移らさせていただきます。すいません。

で、何か拷問の話ありました。拷問の話に関しても二点反駁したい。
まあ一点目として拷問っていうのは不当であって人間の尊厳にこれ反している。これ常識的に考えられます。
で、二点目としてじゃあ死刑はどうなのかってはなしなんですね。これ先ほど現状…あの人間の尊重のために死刑が正当化されるって話、これ伸ばしてください。だから死刑ってのは決して…理由がある、正当化されているんだ、だから大丈夫なんだってこれ言えていると思います。

で、次に何か…あの何か、尊厳の…先ほど我々が何か儀式…のところに反駁して何か、現状の回復が重要なんだってはなしされてましたけど、個人の尊厳を確認できればいいんですね。だからこれは…別に当たっていないと思います。

じゃあ残忍化効果に移ってください。

まず一点目としてですね、じゃあ残忍化効果で刺激される人間がどれだけいるのか分からない。これ多分レアケースですよね。
で二点目として、あの我々…先ほどの反駁が当たっている…残っているので伸ばしてください。要するにどっちみち殺しちゃうんだよって話、これ残っている。
で三点目として、規範意識ができて、それはやらないって話ができている。

で、じゃあ次に、日本で何か…あったって話があって、しかも何か抑止説と、何か逆感作説ですか? それに反対している説ですが…があって、実は後者を……支持するんだってはなしを、あの坂元さんのやつで述べてたんですけど、これ単にですね、この研究だけ見たら後者を支持するってやつであって、全体としてじゃあ後者がちゃんと上回っているってここまで証明できて…全くできていません。
で二点目としてですね、規範意識っていうのはこれ数として現れないのでこれ分かりません。えーとこれ1995年に大塚嘉一はこう述べています。
「最も重要なことは、(実際には必ずしもそうではないが)人を殺した者は死刑になり、正義が回復される、という国民の規範意識が死刑制度によって強化される、ということである。かくして、法体系による保護が貫徹されるのであって、数字にあらわれないとしても、重要なことである。」おわり。(1995年1月「死刑制度存置論」『自由と正義』46巻1号 大塚嘉一(おおつかよしかず・埼玉弁護士会会員) P187)
まあこのように、実際に規範意識が形成される、これ全く残ってますよね。で、形成されると。それを…その観点から見てもですね、死刑に正当性があると、これ主張できていると思います。

で、彼等のなんか無期懲役が何かいろいろ言ってるんですけど、じゃあ再犯…再犯可能性のところですか? いろいろ言われてたんですけど、まず一点目としてなんか再犯のところ…あーすいません、更生可能性のところですね。再犯の可能性がある…これ残っていますと思いますい、何か彼らがじゃあ、その本当に危ない奴に関しては終身刑にするって言ってるんですけど、このですね、この立場を採った時点で、彼らはこのメリットをつぶしていると思います。だから本当に、このメリットを残すのであれば、もうそういう態度は取れなくてですね、絶対に、これもう出さないんだ…あ、本当に、仮に希望を出すんだってことを言わなければならない。で、大臣が言っても、まずもう判断する前からこういう…人間を作ってしまおうって言ってるんですよね。こういう終身刑、本当に危ない奴に関しては終身刑で対処しようという、そういう態度をまず作ってしまっている。これまず問題であるからこういう立場に関しては否定されると思います。


全体の構成として言うなら、最後のほうの再犯の話が2NCとかぶってしまっているということが反省点でしょうか。というか後半は言ってる内容もちょっとよく分からない感じになっていて、役割分担を十分しなかったために弟を混乱させてしまったということでしょう。どんなケースに対しても万全にネガティブブロックを完成させるためには、もっとNegでの試合経験が必要だったということでしょう。

この試合ですべきだった役割分担を2NCとあわせて考えるなら、僕は2NCで犯罪増加のDAと残忍化の論点だけに特化して規範意識とヤクザの議論をやり、統計を捨ててストーリーで勝負するという議論に持っていった上で戦争ADをカットするというのがよかったかと思います。弟には生命権と再犯DAをやってもらい、生命権を否定しつつ、再犯DA or 終身刑化で人間の尊厳がマイナスになるというT/Aという形で、再犯がらみの議論をどっちにしてもVoterにできるような構図にしていればベストでした。しかし、こんなこと言えるのは試合が終わったからなんですけど。
(だから、試合後の反省は重要だということです)

1NRの議論を見ていくと、生命権の議論についてはほぼ完璧に返してくれていたと思います。弟はこのあたりの返し方に結構馴染んでいて、僕が説明した以上に自分の中で消化してスピーチしてくれました。ただ、反省としていうなら、この部分への反論を団藤の最初の資料にあてて挙証責任の転換を吹っ飛ばし、その上で椎橋の資料で死刑が正当化されていることを主張し、Affに強い挙証責任をかぶせるという議論をすべきだったのでしょう。実質的に1NRの内容で団藤の資料は切れていると思うのですが、ジャッジがそう判断してくれるかは別の話ですので、きちんと主張として構成すべきでした。
(なお、ルール解説で述べた「証拠共通の原則」からすれば、実質的に内容が否定されている以上、団藤の資料に明示的にアタックがなくてもこれを評価しないことができます)

拷問が云々という議論の返しは、ちょっとスピーチが混乱していますが、要するに「死刑=拷問(に類するもの)という証明が抜けている」ということでしょうか。1ACで言っていた歴史的進歩がどうとかいう哲学の部分と関連させて言うなら、奴隷制や拷問は理由無く人間を貶めるものであるが、刑罰としての死刑は犯罪に対して正当化されているのであって、これをなくすることが人道的であるとか、歴史的進歩であるとかいうことにはならない、ということです。

残忍化の話については、一通りこちらの議論を引っ張っているのですが、そもそも相手方に有利な論点であるということもあり、もっと丁寧に議論すべきだったのだろうというところです。坂元のエビデンスがこの後やたら伸ばされてしまい、どうもそのあたりで投票したジャッジもいるようなのですが、(この時点ではそのような展開を予想できなかったとはいえ)もう少しこのあたりを突っ込み、資料の信憑性を叩くとともに「数字に出ない『規範意識効果』」と「行為が早まっただけの『見せ掛けの犯罪増加』」という2つの要因があるということを強調し、怪しい印象を与えることができればよかったのかもしれません。

全体としては、無難に議論をしてくれたと思いながら聞いていました。そもそも自分の2NCがパワー不足だったこともあり、ネガティブブロックで一気に有利に持っていく展開はできなかったのですが、とりあえず戦える形で1ARを迎えることはできたという感じです。
具体的には、生命権がらみの人権論で負けることはおそらくなく、戦争ADも(Affの方では立っていると考えていたようですが)ジャッジの表情を見る限りではおそらくVoterにはなりにくいという見立てです。犯罪の増加という点でヤクザの議論が残りそうなこともあり、残忍化効果を小さく見せてしまえば、再犯のリスクもあわせて逃げ切れないこともないだろう…というところです。

次回は1ARをお送りしますが、試験が近いので次がいつになるかは未定です。
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だいぶ間が開いてしまいました。 JDA秋期大会は、無事決勝戦に進出することができ、本来でしたら、決勝戦の模様をご紹介するべきなのですが、今回の決勝に関しては、愚留米さんのブログで、トランスクリプトと、かなりつっこんだ解説が紹介されているので、このブログ...
2008/01/31(木) 13:12:09 | Tabula Rasa
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