愚留米の入院日記
日当たり良好の某法科大学院既習病棟を退院した法務博士の日記。しかし内容はほとんど趣味のディベートの話
第13回ディベート甲子園の解説(1:本大会で問題となったルール解釈の論点について)
去る8月9~11日に、第13回ディベート甲子園が開催されました。優勝した創価中学校と南山高校女子部の皆さま、おめでとうございます。そして、予選も含めて今年の大会に参加された全ての皆さま、お疲れ様でした。

今年の大会では予選で中学を1試合ジャッジし、決勝戦をスクリーンスタッフとして聞いたほかには試合を見ていないのですが、その範囲で大会を通じて思ったことなどを書くことにします。

長くなりそうなので何回か(多分2回)に分けて書くことにします。今回は、予選リーグ及び決勝トーナメントで証拠資料請求につき若干の問題があったということを聞いているので、その関係で解説めいたものを書いてみることにします。例によって私見であって公式な解釈を示すものではありませんが、参考になれば幸いです。
次回は、高校決勝を題材に、今期論題で論じてほしかったと感じたテーマと、それとの関連で今年の高校決勝を振り返るということをやってみる予定です。

それでは、以下、本編です。

1.証拠資料の請求に付随する質問の可否について
今大会中、以下のようなことがあったようです。

選手から細則B-7項に基づく適法な資料請求があったが、このとき請求した側から相手方に対して、資料の内容(これはどういうことを前提としているのか、など)につき質問が行われていた。


要するに、質疑の時間以外に相手方に質問を行うことが許されるのか、という問題です。ジャッジの中にはマナー点を引こうか迷った人もおられたようで、結局引かれなかったので問題は表面化しなかった(なので運用例の評釈としては取り上げないことにした)のですが、以下で少し考えてみることにしましょう。

相手方に対して準備時間中に質問を行う権利が一般的に認められているかについては、この点については明文にないものの、否定されるものと考えるべきでしょう。根拠としては、そのような権利を認める規定がないこと、かかる質問権を一般的に認めることは、ルールが相手方の議論を確認する機会として質疑の時間を設けた上で、原則としてスピーチの時間に相手の議論を理解するフォーマットになっていることに反するということが挙げられます。
この点、ルールが設けている質疑の時間は、審判に対して質問の結果を提出する場として特別に用意されたものであり、判定の材料を生み出す行為としてではなく相手方に質問することをルールが禁じるものではないとの理解もありえます。確かに、相手方が任意に質問に回答している場合、これをルール違反とすることはできないでしょう。しかし、かかる行為がマナー違反と捕らえられる可能性はあります(個人的にはそうでもないと感じますが、マナーの評価は人によるので)し、以上のように質疑外での任意の質問が認められるとしても、それを判定に考慮することはできません(スピーチ中に「先ほど準備時間に質問したところ…」と挙げられた場合でも許されない。あくまで質疑も含めたスピーチ中に現れた事実のみで判断を下さなければならない)

とはいえ、以上のように、準備時間中に質問を行う権利は認められず、あったとしても任意の回答が得られる場合に限られると解する場合であっても、細則B-7項による資料請求の際にする質問の一切についてそれをする権利が認められないということにはなりません。というのも、資料請求の一環として付随的に認められる質問というものを考えることができるからです。
このようなものとして疑いなく入るものとして挙げられるのは、提示された資料のうちでどこが読み上げられたのかを確認する質問や、引用文中の指示語(「これは」や「前述の事例」など)が何を指しているのか確認する質問です。このほかの内容については判断が分かれますが、当該資料の立証趣旨(何を証明しようとしたのか)やアンケートの母数など証拠資料の証明力を判断するための前提を聞くことは許されると考えてよいでしょう。
このような「付随的質問」は、B-7項が当然に予定するものとして、資料請求の一環として回答が義務付けられると解すべきです。すなわち、そのような質問に十分な回答がされない場合、B-8項の「請求に応じて請求された資料を提出でき」たといえず、同項の違反に該当するということです。

もっとも、付随的質問についても、それが判定の材料になるかどうかは別問題です。質疑のステージが独立に設けられていることを重視するならば、付随的質問の結果得られた内容についても、ジャッジに対して回答された内容でない以上はスピーチ外のものとして判定に考慮できないということになりそうです。
しかしながら、付随的質問として許される内容は資料の評価を行ううえで前提となるものであること、質疑の場で期待されていることは資料の確認というよりは弾劾であり、付随的質問としてされる質問とはその存在意義を異にすること、反駁のステージ以降に質疑が設けられていない以上、質疑以外での付随的質問を判断材料にできないとする場合には反駁以降読まれた証拠について十分な評価ができない事例が生じうることを考えると、付随的質問に当たるような内容については、その結果がスピーチで提出され、相手方から特に異論がなかった場合には、判断材料として認められると考えるのが妥当ではないかと思います。

以上、準備時間における質問という角度から、証拠資料の請求に伴う質問の可否について考えてみました。実際にはあまり例がないのですが、そのような話題が出たようなので思うところを書いてみた次第です。他にも考え方のありうるところで、難しいところなのですが、とりあえず今のところは上記のように考えるのがよいかなぁというところです。
ちなみに、この点については立法論として一律に付随的質問(質疑以外でのスピーチ)を禁じるということもありえます。上記のような理由から、個人的にはそのような規定を設けることは望ましくないような気がしているのですが、付随的質問であるかどうかの判断が困難であるなどの事情から、付随的質問による試合の混乱が大きいとすれば、禁止するという選択もありえるとは思います。


2.資料請求の際に原典を要求できるか
資料請求の際に、中略をチェックするために原典を見せてほしいという要求がされた試合があったそうです。
これについては過去のルール解説(4.3.2.2)に書いているので参照していただきたいのですが、結論としてはルールは原典による証拠の提示を義務付けておらず、そのような提示がなかったとしてもB-7項の資料請求に応じたことになります。

ただ、中略を確認するために原典を見たいということは理解できるところであり、資料集のようなものを作成する際には、中略部分を上消し線で表記するなど、中略した内容を確認できるようにしておくことがマナーとして求められているというべきです。


3.資料提示が遅れた場合にどうなるか
資料請求をしたのに結局資料をもらえなかったという場合にどうなるのか、というような報告もありました。
これも過去のルール解説(4.3.2.2)に書いているのでそちらをお読みいただきたいのですが、故意に資料を提出しなかったような悪質な場合はC-1項4号の反則対象となりますし、提示が遅れたので資料を十分確認できなかったという場合にはB-6項にもかかわらずスピーチ中にも資料を返却せずとどめ置くことを許すなどの処置がありえます。また、資料請求に応じられず、その結果十分な吟味ができなかったという事情があれば、場合によっては当該資料の証拠能力を否定するということもありえるでしょう。


以上、今大会で聞いたルール解釈に関する論点についての私見です。その全てが資料請求に関してということについては、証拠資料についての意識が選手の中で高まっているということでよい傾向なのかもしれません。審判としても、そのような意識に応えられるように、ルール運用の方法を考えておく必要があるということでしょう。
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