愚留米の入院日記
日当たり良好の某法科大学院既習病棟を退院した法務博士の日記。しかし内容はほとんど趣味のディベートの話
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
第13回ディベート甲子園の解説(2:中学論題を題材に議論の着想方法を考える)
前回はルールの話をしていましたが、ここからは議論の中身について書いていくことにします。ただ、僕は今大会で予選を1試合ジャッジしただけで、決勝も裏でスクリーン表示をしながらフローを取っていただけなので、試合の内容につき細かく論評できるネタを持ち合わせていません。
そこで、おそらく選手の皆さんが悩まれたであろう内容や、今後議論を考える上で何かしら有益になるのではないかと思われる内容につき、今季論題を題材に解説するという形式を取ることにします。

とりあえず今日は中学論題を題材にした内容を取り上げます。次回は高校決勝で肯定側が勝利した理由であるところの重要性の議論を取り上げつつ、難しい論題であった派遣労働について僕なりの解題めいたものをやってみることにします。


1.論題の文言に着目して議論を考える
今回の中学論題は「日本は中学生以下の携帯電話の使用を禁止すべきである。是か非か」というものでした。地区予選から見ていた印象としては、肯定側は出会い系サイトによる犯罪被害やネットいじめの問題を取り上げ、否定側は災害や犯罪に遭ったときに身を守るためのツールとして携帯が役立つという問題を取り上げていたチームが多かったようです。中学決勝もそのような議論が展開されていました。

中学論題は前に同様の論題が取り上げられていたこともあって個々の議論はよく分析されており、まとまりのある試合が多かったように思います。しかしその一方で、それぞれのチームが自分たちの主張を繰り返すだけで、相手の議論も含めて全体をまとめあげるスピーチは少なかったように思います。特に否定側は、うまく肯定側のメリットにうち勝つような比較のストーリーを作るのが難しかったように見えます。
そこで、今回は「論題の文言に着目する」ことによって議論を構想し、比較のストーリーを作り上げる方法について少し紹介することにします。

論題を読むときには、それをいくつかの要素に分節することで、その論題に示された政策の特徴を知ることができます。「日本は中学生以下の携帯電話の使用を禁止すべきである。是か非か」であれば、①日本が②中学生以下に③携帯電話の④使用を⑤禁止する、という政策であることがわかります。この中で特徴的なものは、②と③だということができます。
この「特徴」に着目して議論を考えることで、より説得的な議論を展開できることがよくあります。例えば今回の場合「なぜ『中学生以下』だけに使用を禁止するのか」とか「なぜ『携帯電話』を規制しなければならないのか」ということを考えることで、道が開けてくるということです(ちなみに、このように論題の特定の文言に着目して議論を展開することを「論題の正当化(Justification)」と言ったりします。意味合いはちょっと違うのですが)。

ちなみにどうやって「特徴的」かを考えるに当たっては、その論題でよく出てくる議論から逆算的に考えることができます。例えば、炭素税など国際的な問題が多いのであれば①も特徴となりますし、ディベート甲子園の論題ではありませんが「代理出産を法的に認める」という論題では、現在法的に禁止されているわけではない(医者が自主規制しているだけで、勝手にやっている医者もいる)というところから、⑤に当たる要素が重要となってきます。
今回の論題では、小中学生のネット被害が問題になったり、携帯のいろいろな機能が取り上げられていたりします。そうした議論から、②と③が重要になってきそうだと考えることができるのです。

以下では、このような文言に着目した上でどのような議論ができるのか、中学論題を例に見ていくことにしましょう。

2.中学論題肯定側での例
携帯論題の肯定側から上記②に着目すると、「なぜ『中学生以下』だけに使用を禁止するのか」という点を説明する必要があることがわかります。
この観点から、出会い系サイトの議論として実際に出ていた議論としては「小中学生は好奇心が強い」とか「小中学生は弱い存在なので特に保護されなければならない」といったものがあります(決勝でも出ていました)。そのほか「最近は小中学生を狙った性犯罪が多い」という議論も当たるでしょう。
この点についてもっと精緻に分析し、組み合わせたりして展開することで、より説得的な議論が出せたでしょう。例えば「小中学生はまだ性に対しての知識に乏しく、好奇心によって気軽に出会い系サイトなどにアクセスして犯罪に巻き込まれるし、それを分かって小中学生を狙う大人も多い。このように危険が大きく、警戒感がないので特に保護されるべき小中学生のために、危ない携帯電話を禁止する必要がある」というストーリーを考え、個々の議論を作っていくという道があります。
なお、②の議論を③の議論と組み合わせる方法もあります。好奇心が強い小中学生を刺激するツールとして携帯が危険である、といったものです。

ネットいじめの議論では②の要素に着目した議論はあまりなかったのですが、小中学生はコミュニケーションの経験に乏しく、ネット上で過激にいじめに走る危険性があるとかいう分析はありえたかもしれません。また、小中学生にとっては(実は高校生もそうでしょうけど)所属するコミュニティが限られており、ネットいじめをされた場合に逃げ場がないなどの分析もできるかもしれません。ただ、いじめの問題は子どもについて起こるのがほとんどなので、②の問題を取り立てて論じる必要は低いかもしれません。

③の要素に着目した議論として頻繁に出ていたのは、「パソコンには移行しない」といったものです。これはどちらかというと否定側からの反論で多かったのですが、肯定側から積極的に証明していってもよかった論点だと思います。この点、肯定側は「携帯だと手軽である」ということを述べていたのですが、どういう点で手軽なのかというのをもっと具体的に説明してもよかったでしょうし、携帯の方が危険が大きいという議論もありえたでしょう。例えば、「携帯だと直接誘い(いわゆる迷惑メール)が来て、好奇心の強い小中学生がふらりとサイトに行ってしまう」という議論がありえたかもしれません。
ネットいじめの議論でもこうした議論はありましたが、僕の見た議論の中には「携帯はいつでも持っていて、つねにいじめのメールが来たり、気になって裏サイトにアクセスしたりするので、一日中いじめられることになって逃げ場がなくなる」というものがありました。これはなかなかよい分析だと感じました。

以上のような議論に対し、否定側としてもそれぞれの要素に反論することができます。②については、そもそも出会い系サイトの問題は犯人である大人をどうにかすべきものであり、むしろ被害が多いのは高校生である(小中学生の被害は全体からすれば少ない)以上、ことさらに小中学生だけに携帯を禁止する理由はない、という立場を取ることができます。
③については、パソコンに移行するという議論がありますし、ネットいじめについては、ネットでいじめられなくなっても現実でもいじめになるだけという話もあるでしょう。パソコン移行の議論として聞いた中でもっともよいと感じたのは、「実は小中学生の出会い系被害の多くは子どもから積極的に行っているものであり、プラン後もこのような動機は変わらない。そしてプラン後には携帯が禁止されるが、パソコンによる出会い系のアクセスも容易であり、親も十分管理できない。パソコンでもそれほど不便にはならない以上、動機のある子どもは依然として出会い系にアクセスする」という反論です。たとえるなら「おにぎりがほしい人は、家の隣にコンビニがあれば当然買いに行くが、それがないとしても徒歩3分の位置にコンビニがあればそっちに行く」といった感じでしょうか。いくつかの分析を重ねることで、③の要素につき「携帯を禁止しても意味がない」ということを説得的に論じています。

3.中学論題否定側の例
否定側では、肯定側に比べ、②や③の要素を論じることが難しかったのか、あまり積極的に議論がされていなかった印象を受けます。

②の要素に着目して「なぜ『中学生以下』に携帯を禁止することがよくないのか」を説明するためには、中学生以下にとってデメリットの発生が大きいということを示すことが有効だと思われます。全国予選リーグで見た試合の中でそのような分析をしていたものとして、「小中学生は塾通いなどで夕方や夜間に一人で行動する機会も多くなっており、子どもを対象とした犯罪も増えてきていて、親の不安も高まっている」というものがありました。そのような状況では、小中学生を犯罪被害から守ることは重要だと言えるでしょう。
災害被害の関係では、子どもがどういう状況で災害に巻き込まれるのか(それもまわりに大人が以内状況)を具体的に説明するのはなかなか難しそうなのですが、その中で「子どもが携帯を持っていないと親が心配し、そのせいで親が救助活動などに参加できなくなって被害が拡大する」といった分析がされていたことには感心させられました。

③の要素については、携帯がGPS機能やブザー機能などを複合させていて他の道具より優れているとかいった分析が出ていました。ここで重要なことは、単に役立つという以上に「他の道具では代えることができない」という分析をすることです。そのような議論をすることで、メリットとの比較で生きるような論点になるのです。

4.中学論題の比較ストーリー例
最後に、以上の内容を前提に、肯定側と否定側のそれぞれについて、比較のストーリーの例を考えてみましょう。
肯定側が「出会い系サイトの被害防止」、否定側が「犯罪から逃げられなくなる」という議論を出したものとして考えてみます。その他のメリットデメリットについても同様の観点から考えることができるので、あとはみなさんで考えてみてください。

肯定側は、メリットについて②の要素として「小中学生は性犯罪の対象として狙われており、知識不足から被害に遭いやすい」ということを、③の要素として「携帯はパソコンより手軽で親の管理が届きにくく、実際に出会い系の被害はほとんど携帯で生じている」ということを展開していき、一方で否定側のデメリットについては③の要素として「防犯ブザーなど他にも対策はある」といった議論を出しておく必要があります。その上で、以下のようなストーリーで展開していくことが考えられます。
「デメリットは携帯でなければ防げないという問題ではなく、警察による防犯や防犯ブザーの携帯などほかにも対処すべき方法がある。一方、出会い系サイトの問題は悪意ある大人とアクセスしてしまう方法の規制が唯一のポイントであるところ、携帯がその方法としてもっとも手軽であり、現にそこから被害が拡大している。つまり、小中学生は携帯を通じて悪意ある大人にねらい打ちされている状態にある。通り魔は携帯があるから襲わないということにはならないが、出会い系を使った売春などはまさに携帯を持っている小中学生だからこそ上手く襲えている。この現状から私たちが選ぶべき選択は一つ、携帯という危険なツールから小中学生を守るために携帯を禁止することである」
これは、犯罪の手段と携帯電話との関連性に着目し、③の要素から比較を考えた例です。②について論じているのは、比較の前提として「小中学生が狙われている」ということを示すためですが、小中学生の好奇心と携帯の特徴を関連させれば、より深い分析ができるでしょう。

一方否定側は、デメリットに関しては②について「少なくない小中学生が夕方以降に一人で行動するなど犯罪の危険があるライフスタイルを取るようになっており、そこを狙った犯罪も増えているのでhごする必要がある」ことを、③について「携帯は他のツールより犯罪にあったときに有用である」ということを示しておきます。一方でメリットについては、②の観点につき「小中学生全体の中では出会い系サイトの被害はそれほど一般的ではない」ことを、③の観点については「他の方法でもアクセスできること」を議論しておきます。その上で、以下のようなストーリーを出すことができます。
「メリットの問題は、実は小中学生の中でも限られた層にのみ起こっている問題で、私たちも含めた普通の生徒はそんなサイトにアクセスしないし、出会い系にアクセスしてしまうような生徒は携帯を禁止してもパソコンなどで誘いに乗ってしまうかもしれない。一方、デメリットで説明した犯罪被害は、塾通いなどで単独行動も増えた最近の小中学生にとっては他人事ではすまない現実的な危険性であり、そのような危険に際して頼れるのは防犯機能付きの携帯だけである。「普通の」小中学生にとってより重要なことは、出会い系サイトではなく日常にある通り魔の危険であり、それを守れるのは携帯しかない。守るべきは数も多く、普通に暮らしている小中学生であり、出会い系にアクセスしてしまうような好奇心の強い生徒のせいで危険にさらされる理由はないし、そのような生徒は携帯を取り上げたところで結局守られないかもしれない。より多くの小中学生に安全を提供するためには、携帯という防犯手段を取り上げるべきではない」
ここでは、②の要素に重点を置きつつ、規制対象となる小中学生をよりよく守る方法とは何かという観点を押し出すことができます。それとの関係で、守ろうとする小中学生がプラン後にどうなるのかを③の観点から絡めることで、保護すべきはどちらかということをより強調することを目指しています。

以上のような議論が考えられますが、無論これが唯一の正解というわけではない(もしかしたら正解ですらないかもしれない)し、他のメリットデメリットについは違ったストーリーを作る必要があります。そのときには、②と③のうちどの要素により着目すべきかということも違ってきます(ネットいじめや災害時の議論の場合、③に着目した方がよさそうです)。

ただ、論題の文言に着目して議論を組み立て、それぞれの文言から両チームの議論を整理分析することが、説得的なスピーチにつながるという可能性については、ある程度示せたのではないかと思います。これはどのような論題についても一緒です(もちろん高校論題も。この場合は「なぜ労働者派遣」と「なぜ全面禁止」がポイントになります)。

そういった角度から自分たちのしてきた議論を再検討することは、次の大会に向けたトレーニングとしても有用でしょう。今年不本意な結果に終わったという選手の方は、一度上記のような観点から議論を考え直してみてもよいかもしれません。いろいろ気づく点も多いのではないかと思います。
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
copyright © 2005 愚留米の入院日記 all rights reserved.
Powered by FC2ブログ.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。