愚留米の入院日記
日当たり良好の某法科大学院既習病棟を退院した法務博士の日記。しかし内容はほとんど趣味のディベートの話
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JDA秋季大会の雑感
最近はやたら論争的な連載を書いて盛り上がっていたわけですが、普通の話題も書かなければということで、先日あったJDAの感想でも書いておくことにします。入院日記なのにロースクール関係のことを書かないのは仕様です。ブログの紹介文を書き換えるべきかもしれません。
某POPについては、その作成母体が今月いっぱいで解散するらしいので、その後に弔辞ということで総括を書いておしまいという予定です。

JDAにはジャッジとして伺ったのですが、結構な人手不足らしく、予選3試合を見ることになりました。決勝にも突撃させられる予定だったらしいのですが、どさくさにまぎれて実験室チームに参加した弟が決勝まで行ったので外れて助かりました。それにしても決勝が実験室B対実験室Aとは、何という内輪…(昨年のばるさみこすもITBとは言いながら実際は実験室関連団体だし。ばすさみこすが予選で当たったうち2チームも関連団体だったという)。まぁ、実験室のリサーチ量と練習試合の数は参加チームで抜けてるので、当然といえば当然です。

実際ご覧になっている方も少ないでしょうから、決勝戦を中心に「日本政府は核燃料の再処理を放棄すべきである。」という論題でどういう議論が展開されたのかということを簡単に触れつつ、何かしら参考になりそうなことを書ければという感じです。

1.否定側の戦略~何をどう議論するか~
今季の論題は否定側が非常に難しいという印象を受けました。核燃料の再処理をしないと原発の使用済み燃料の置き場がなくなって原発を稼動できなくなるという話があり、これを前提に原発停止DAなどを作っているチームが多かった気がします。その他、再処理技術が停滞してよくないとか、再処理せず直接埋めると危ないとか、再処理した方が核燃料を軍事転用しにくくなってよいとかいう議論があるようですが、どれも決め手に欠けるものばかりです。原発論題でおなじみ「止めても他の方法で代替可能」という議論があるし、そもそも再処理が上手くいく保証もなく(まだ六ヶ所村の再処理工場は稼動していない)、上手くいっても現在の計画では原発から出る使用済み核燃料の全量処理はできないという事情があります。

そんな中聞いていて面白いと思ったのは、予選で見た試合で見られたあるチームの議論展開です。そこは1NCで普通の原発停止DAを出していたのですが、2ACで火力水力を用いて代替するというシナリオを出してきたのに対応して、2NCで火力水力にシフトすると環境に悪かったりコストが高かったりするというDAを出してきました。1NCで基本的な考え方(エネルギー政策で考慮すべきポイント)を出していたところ、相手のプラン後のシナリオに合わせてそれらのポイントにAffのプランが合っていないということを論じるという、なかなか好印象の議論でした。
もっとも、細かいことを言うと、1NCのDAが長すぎる(相手の立場が不明なので、停電の話などは要らないのではないか、とか)とか、2NCでの展開方法はもっと練りこめるかもなどの問題はあるわけですが、方向性としてはよいと感じました。

あと、決勝戦でNeg(弟のチーム)が出していた「六ヶ所村と再処理して燃料を運び出すという約束をしているのに、再処理をやめるのは無責任でありよくない」という議論も、うまく展開すると面白いんじゃないかなぁという気がしました。説明不足で不評だったようですが、決勝のAffのプランは「今運び込まれている燃料はとりあえず中間貯蔵」という無責任そのものの立場だったし、プラン後の対応方法については結局不明確だったので、そのあたりを捉えつつ、六ヶ所村の人々にとって何が一番嫌なリスクなのか(使用済み核燃料がそのまま存在していることが嫌なんだという話は成り立ちそう)という観点で伸ばしていくと、Negの出す他のDAやケースアタックとの兼ね合いで相性のよい議論になる可能性を感じます。僕が大会出るとしたらこのDAを軸にやりたいところです。

2.マニアックな話に惑わされず議論を絞ろう
ここからは決勝戦のお話しです。
今回のAffのケースはかなり完成度が高く、ぱっと聞いているとAD1については隙のない感じでした。AD1の話は大要以下のようになっています。
・再処理工場は稼動中どこで事故が起こるかわからない
・おまけに核関連の人材はやる気がなく、耐震偽装などやばいことも起こっている
・地震が起こると再処理工場が大事故に
・再処理工場での事故は不可逆なので少しでも事故の可能性あればやめるべき
・再処理工場をやめれば稼動中の事故はなくなるし、使用済み燃料はプールに漬けておけば水が抜けてもちゃんと対応できて安全

どこが秀逸かというと、普通はケースアタックで読みそうな「使用済み燃料はプールに漬けておけば水が抜けてもちゃんと対応できて安全」というエビデンスを、再処理工場が使用済み燃料を切り刻んで加工するため危ないという話と対比させ、解決性に持っていっているところです。

このケースに対し、昔パートナーだったこともある某入院患者が猛烈にアタックをかけていたのですが、量が多すぎたきらいがあります。それに対する2ACも非常によかったのですが、燃焼度がどうとか(GWT?)いうやたらマニアックなエビデンスを読んでいたり(聞き取りましたが結局どういう風に反論になっているのかよく分からず)と、すさまじいカオスな状況になっていました。
思うに、上記のケースに対して攻撃するとすれば、稼動中の事故という点には「再処理工場での事故は原発と違って小さい」というものと「六ヶ所の工場は構造上全地下なので安全」という話だけで足りた気がします。あと、試合中では出てませんでしたが、やる気なし&偽装の問題についてはCPで対応できたのではないかと。正直、職員の士気とか偽装といった問題は、再処理という事業を評価する本質ではないと思います。やばいって分かっているなら、再検査して補修すればいいし、職員についてもきちんとした人を送り込めばいいじゃないかということです。
ちなみに、この試合では1NRがめちゃくちゃいい仕事をしていて、Affの「JCOの事故がやばかったじゃないか」といった反論などに「ほかはともかく六ヶ所村の再処理工場は全地下だからそんな事故は全然問題なし」と、めちゃくちゃ鮮やかな返しをしていました。それだけに、1NCで無駄に思える議論が多かったのが悔やまれます(まあ僕もよくやりますが)。

地震の話については、通常稼動の部分に時間を割きすぎて十分なケースアタックがなかったのですが、結局は「いくら基準を満たした施設でも偽装されてるし、地層がずれるような地震が起これば施設に関係なく事故になる」という感じでまとまってしまっていたように思います。
ただ、「地層がずれる事故」という話まで持っていってしまうと、それじゃあプールに漬けておいた核燃料もやばいんじゃないかということで、結局解決性を失ってしまうような気がします。そこで六ヶ所への責任DAを上手く絡め、「六ヶ所の人にとって一番危険なのは、再処理せずに運び込まれたままの使用済み燃料そのものである」という感じで締めれば、なかなかよい返しになるのではないでしょうか。

3.シナリオを語る
今回の大会講評で強調されていたのは、議論のシナリオをしっかり説明しようということです。決勝のNegがその点で弱かった(難しいので仕方なくはある)というもあっての提案でしょうが、これは非常に重要な指摘だと思います。
講評の中では「毎スピーチ30秒、最初に時間をとって概要を説明するというのはどうか」というなかなか踏み込んだ提言もあったのですが、展開したい議論の種類によっては、それだけの時間をかける価値はあるのかもしれません。

もっとも、これは形式的にオブザベーションとか言っとけばいいというものではなく、相手の議論を踏まえた上で、全体を見据えて説明されるべきものです。今回の決勝のNegにとっては、十分時間を割いて話すべき内容だったかもしれませんが、もっとシンプルな試合であれば、その重要性は下がるかもしれません(個々の議論の帰趨で決まってしまうところが大きいので)。
ただ、この提言の本当の意味は、それぞれのステージにおいて「どうしてこれからそういう議論を出すのか」ということをきちんと理解して喋らないといけない、ということでしょう。最初に30秒とって説明するにせよそうでないにせよ、そういった説明をコンパクトにできる力量・理解があれば、分かりやすいスピーチをすることができるでしょう。要するに、重要なことは「自分たちの議論についてしっかり理解し、それに合わせて試合全体の流れの中で相手の議論をきちんと理解し、位置づけよう」ということです。その一つの表れがスピーチ中でのまとめスピーチです。

試合後に振り返るといろいろ勝手なことを思いつきますが、試合の中ではなかなかそういった筋が見えてこないものです(僕のことです)。そういう未熟なディベーターにとって、今回の大会講評を踏まえ、試合の中で大枠を捉えられるような能力と、そういった作業を試合中にうまくこなせるような事前準備の方法の研究というのが、大きな課題になってきそうです。


そんなところです。今年も総じてレベルは高めで、よい大会だったと思います。ディベートに関心のある中高生の方々(中学生にはきついかもしれませんが)は、決勝戦くらいは見に来てもよいのではないかと思います。来年の春にもありますので、機会があれば是非ご観戦ください。
コメント
この記事へのコメント
秋大会
Negの1st担当だったものです。

ファイナルは自分も正直1NCが無駄だったなぁと思いました。
本来であればM2の日常被ばくの方へカードを2~3枚割くべきでしたが、ガラにもなく緊張してしまって(汗)
あと完全なプレパ不足が悔やまれます。ブリーフ化してよむカードをきめておけばよかったのですが、適当に目についたカードに付箋をつけて時間を考えず読んでいたらあのザマでした。。。

1NRはご指摘の解決性へのアタックをしていたつもりでしたが(結局地震が起こればプラン後に残っている使用済み核燃料も漏れてしまうので、彼らの言う放射能汚染は起こるという内容)、試合後管理人さんや後輩たちに話を聞いてみても伝わっている様子はありませんでした。

思うに、的確なサインポスティングがしなかったために通常の臨界事故へのアタックの一環としてとらえられてしまったのでしょう。

いずれにしてもまだまだ自分もディベーターとして未熟であったということを痛感しています。JDAのファイナルという栄えある舞台に立つのに、入院生活の合間にちょこっとやるというのではプレパも優勝するんだという勢いも覚悟もすべてが足りなすぎたと思います。

そんな中管理人さんの弟さんともう一人のパートナーには本当に支えられたなと同時に申し訳ないなと思っています、

来年はいよいよ入院生活も大詰めを迎えるのでなかなか厳しい状況ですが、退院後また活動を開始したいと思います。
2008/10/29 (水) 08:51:24 | URL | ウエポン #wKydAIho[ 編集]
これはこれは
>ウエポンさま
ファイナリストにコメントいただけるとは光栄です。どうもありがとうございます。

1NRの地震アタックについては、説明がちょっと足りなかったかなぁという印象です。僕も試合後に弟から聞いてなるほどと思いましたが、試合中はそういう話だと分かりませんでしたので。
ADの事故は限定された状況でしか起こらない…という説明より、ADが解決しようとしているのは「プールに沈めておけば外で核燃料を加工している状況での流出は防げる」ということだが、(偽装云々の話はさておき)六ヶ所はその構造及び耐震設備から加工中の核燃料が漏れることはないし、Affのいう設備もろとも破壊するような地震が起これば、プールに沈んでいる核燃料も吹き飛ぶので、再処理しようがしまいが関係ない…という説明がよかったのではないでしょうか。
その上で「Affのいうように地震が怖いのだとすれば、早く再処理して固化体にして処理するのが一番であり、六ヶ所村の人もそう思っている」という感じでまとめれば、DAとの絡みでもよい感じで処理できたでしょう(DAの議論が評価されているかは別問題ですけど)。

しかし、決勝は議論も込み入っていて、スピーチは難しかったと思います。観戦してただけの立場なので好き勝手書いていますが、実際僕の昨年のスピーチも終わっていたので偉そうなことはいえません。

最後になりますが、弟が大変お世話になりました。決勝戦も、個人的にはとても楽しめました。
入院生活も大変そうですが、お互い頑張りましょう。
2008/10/30 (木) 01:16:14 | URL | 愚留米@管理人 #tX1BiP8k[ 編集]
>>今年も総じてレベルは高めで、よい大会だったと思います。

ちょww
この程度の議論でかよwww
この程度のアナリシスはNDTだったらシーズン最初のSIDTから出てますが。


JDAの親父どもは頭まで老化してるんやな、まぁ代表のarrow fieldがあれじゃぁな。
批評する前にNDTで行われているブレスト・イシューメイキングに参加して学んだらいいね。
2008/11/06 (木) 22:43:56 | URL | NDT debater #-[ 編集]
そうですか
>NDT debaterさま
(SIDTという大会名から察するに、NDTスタイルの英語ディベート、という意味でしょうか?)

コメントありがとうございます。
ちなみに、僕はJDA関係者でもなく、親父というにはまだ若すぎる若輩者ですので、その点は誤解のないようお願いいたします。参考までに申し上げておきますと、最近ここで取り上げたPOP著者と同い年らしいです(どうでもいいですが)。

レベルが高めというのは、日本語ディベートの中ではということなので、絶対的な水準として高かったかというとそうでもないでしょうし(実際講評ではそんな感じのことも言われておりました)、英語ディベートの大会ではより優れた議論が回っているのかもしれませんね。

とはいえ、一般論として、僕が本文で紹介したアナリシスの程度だけをもって大会全体のレベルを評価するのもあまり公平とはいえないのではないでしょうか。NDT debaterさまが実際JDAを観戦された結果そのようにおっしゃられているのであればまだ分かりますが。
一ジャッジにすぎないディベーターが読者に配慮しながら書いている記事の一つだけを見て、JDA役員(いわゆる「大御所?」)への私怨を交えつつ揶揄的に書いた批評については、僕からそれ以上コメントすることはできません。

というわけで、以下、NDT debaterさまのコメントとは無関係に一般論を述べさせていただきます。NDT debaterさまとは異なり、特定の個人や団体を批判する趣旨ではありませんので、その点はお断りしておきます。

JDAで展開される議論の水準が(英語ディベートと比べて)相対的に高いかどうかは個人的にどうでもいいのですが、英語ディベートで優秀な成績を収めているらしいOBや現役生のチームもJDAに何度か出場し、必ずしも優勝できていないことを考えれば、JDAのレベルが英語ディベートに比べて劣っているとはいえないような気がします(それでも決勝に残るチームが多いだけ、英語ディベーターの層は厚いのかもしれません。英語ディベートOBの社会人がJDAのトップディベーターであることもその現れでしょう)。

また、僕個人もJDAで何度かジャッジをさせていただいた経験があり、現役英語ディベーターのチームを見たこともあるのですが、その中ではエビデンスと主張が全くずれていて話にならないなど、問題があると感じたこともあります(これは彼らの能力を否定するものではありません。リサーチは進んでいたと思いますし、上記問題についても指摘したらすぐ納得してくれました)。
今年の英語ディベート大会での議論の内容についてはよくわかりませんが、昨年の後期論題は選手として参加していたこともありNAFAのパッチを見たことがあります。そのときには、正直新しいアナリシスはなく(関西の大会では理解不能な言葉が踊っていてその意味で新鮮でしたが)、その意味ではNDT debaterさまと同様の印象を受けていました。
また、US-Exchange Debaterが日本の英語ディベート大会決勝(たしか2007年のTIDLだったでしょうか)を見てがっかりしたという話も聴いたことがありますが、これはアナリシス以前に英語ディベートなのに英語でないスピーチをしていた(Chinese共産党、と言っていたらしい)というエピソードなので、今回の話とはずれるのかもしれませんね。

ただ、繰り返しになりますが、僕は自分の出ている大会が他の大会に比べてどうかという話それ自体には興味ありません。自分たちの議論に向上の余地があるかどうかが問題であって、ディベート業界の中で他人の足を引っ張ったりしてもどうしようもありませんから。
なので、僕も英語ディベーターの方の話のうち参考になりそうなものは積極的に取り入れて勉強させてもらおうと思っていますし、致命的にまずいと思うものについては、ディベート界にとってよくないと思いますのでこの場で指摘をさせていただいています。

というわけで、NDT(アメリカのそれではないですよね?)のブレスト・イシューメイキングというものが参考になるのであれば、選手として大会に参加する際には(許されるものなら)出席したいものです。
しかしながら、その場がNDT debaterさまのように、「JDAの親父ども」といった誹謗中傷を人のブログにコメントすることを躊躇しないような方々によって占められているのであれば、おそらく有意義な議論は期待できないと思いますので、レベルが低くても自分たちでブレストするしかないかなぁというところです。

以上、気分を害されたようでしたらごめんなさい。
くどいようですが、僕はここでコミュニティ批判や論争をするつもりはありません。いずれのコミュニティもディベートをしているということでは同じであり、学ぶべきところは学び、直すべきところは「実質的かつ建設的な」批判によって互いに尊重しあいながら意見交換するべきであって、お互いをけなしあうものではないからです。もし上記の文章がそういった「けなしあい」に当たるということでしたら、当該部分を修正することも検討しますので、遠慮なくおっしゃってください。
2008/11/07 (金) 03:22:33 | URL | 愚留米@管理人 #tX1BiP8k[ 編集]
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