愚留米の入院日記
日当たり良好の某法科大学院既習病棟を退院した法務博士の日記。しかし内容はほとんど趣味のディベートの話
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高校論題の変則プラン(?)に関する小考察
前回は何か変な文章を書いてしまいました。せっかくの論題発表なのに読みにくいと不評だという話があるので、今回は高校論題の解釈に関して少し書いてみることにします。

09年ディベート甲子園高校論題
「日本は国会を一院制にすべきである。是か非か」
*参議院を廃止するものとする。



1.衆参両議院を廃止して新しい院を作るプランの可否
1.1 実益
衆参両議院を廃止して新しい院を1つ作り、それによって一院制を達成するというプランがありえますが、こんなものを出して肯定側にとって何かいいことがあるのでしょうか?
普通に考えると、なさそうです。ただ、このプランが認められないと解し、かつ「衆議院を存置する」=「衆議院は現在のままいじらない」ということが論題の要求だと考えると、肯定側の出しうるプランスパイク(デメリット対策のプラン)の範囲がかなり狭まってしまいます。よって、付帯事項の解釈という形でこの点を問題とする価値がないわけではありません。

1.2 ありうる解釈
(1) 新しい院を作ってもOK
このように解する理由としては、論題は「一院制」と言っているだけで、どのような一院にするかにつき何も限定を付していないということが挙げられます。もし、衆議院を残すプランのみが許容されるのだとすれば、「日本は参議院を廃止すべきである」という論題になっているはずです。
このように理解すると、衆参両議院をつぶして国民議院を創設するプランも許されることになります。しかし、だからといって、国民議院でユニークなシステムを作り(選挙方法とか)そこからメリットを出すということは認められない可能性が大きいでしょう。それはあくまでシステムの導入によるメリットであり、一院制にすることで生じるメリットではないからです(カウンタープランが許されるなら容易に否定されるものです)。一院制でしか導入できないシステムから生じるメリットなら、論題内と評価されることになるでしょうけど。

(2) 衆議院を残さなければならないが、衆議院の改造は自由
この解釈は、現在の国会が衆参両院でできているところ、付帯事項をそのまま反映させると、衆議院だけが残って一院が達成されることになり、これ以上の政策を要せず一院制となることから、付帯事項を含めた論題は衆議院だけの一院制を想定しているという読み方に基づきます。そして、論題はそれ以上何も言っていないので、衆議院のあり方を変えることは認められるということになります。もっとも、衆議院の構成を参議院同様にするなどの場合、実質的に付帯事項の趣旨に反するとの見方もありうるでしょう。
このように理解しても、(1)との違いはほとんどありません。衆議院のシステムを変更してそこからメリットを出すだけでは、結局のところ論題外であるからです。

(3) 現状から参議院を取り除いた状態が論題の所期するところである
これは、(2)の読み方をベースに、付帯事項がわざわざ衆議院ではなく参議院の廃止を支持しているということは、廃止されずに残るのが衆議院でなければならないということを含意しており、すなわち現在の衆議院の構成などを前提として議論すべきだと理解する解釈です。
この場合、肯定側のとりうるプランの範囲がとても狭くなってしまいます。

以上を踏まえて、どの解釈が合理的でしょうか?
僕は、参議院の廃止という文言が付帯事項にとどまっているという点を重視し、参議院さえ残さなければ制度設計は自由であると読むのが自然かと思いますが、(2)や(3)の解釈がありえないかというとそうでもなさそうな気がします。この点、一院制は辞書で引くと「一つの議院のみで構成されている議会制度」とありますが、ここから直ちに(1)~(3)の解釈から一つだけが導かれるというものでもありません。付帯事項の実質的解釈が必要となるからです。辞書や文法書だけ引けば論題が解釈できるというようなお花畑は、ディベートという競技にはそうそうないのです。

ただ、議論できる範囲に変化が生じうるとすれば、それは(3)の解釈を取る場合だけでしょう。そして、論題自体はあくまで「一院制」を支持するのみであり、今回の付帯事項だけから「現状の衆議院一院だけを支持しろ」と理解するのはちょっと無理があるので、実際には問題は生じないのではないかと思います。

2.かわり種プランについて
前回の謎問題でも取り上げましたが、肯定側としては、衆議院(あるいは新しい院)につき、2つの資格の議院を併存させたりするような形で、実質衆参二院を作るようなプランを考えることもできます。これにより、否定側のデメリットの多くを弱体化させることができますが、そのようなプランがどこまで許されるかということが問題となります。
例えば、以下のようなプランがありえます。

(1) 一院に2つの議院資格を併存させる
例えば、議員の半分は被選挙権を25歳から(今の衆院)、もう半分は30歳から(今の参院)という制度はどうでしょうか。あるいは、議員の権限という点から、議員の半分だけに内閣不信任案を提出できるようにしたり、議員の半分だけで再議決できるということもありえるでしょうか。
このような場合、「実質二院」ではないかということが疑問となります。このような問題を考えるには、一院の活動方法という点に着目するという方法がありえます。すなわち、議院の最終的な活動は決議ですから、決議を異にするような資格の差異は認められないという考え方です。そうすると、議院の半分だけに内閣不信任案…というのは実質二院っぽい感じもします。ただし、合議体一般において、メンバーごとに資格が異なるということはありえないことでもないので、これだけで決め手になるかというとなかなか難しいところでしょう。議員資格の問題(被選挙権の違いなど)はさらに微妙で、これは現在でも各議院で二つの選挙方法が併存していることからも認められそうな感があります。
しかし、議員の半分は議会の解散にもかかわらず資格を維持できる…といったプラン(参議院が解散しないことを反映させるため)は、解散というのが議院単位でされる行為だと考えられることから、かなりブラックなところだと考えられます。しかしこれについても「一部解散」という概念がありえないかというとそうでもないですからね。

(2) 残した一院を完全に参議院にする
これは実質二院というものではありませんが、衆議院を残しつつ、その構成などを変えて実質参議院にしてしまうというプランです。どういう利点があるかは不明ですが。
これは、上のほうでも述べましたが、付帯事項の解釈によるでしょう。付帯事項が「残った院は参議院でない別のものでなければならない」という強い意味を有しているのであれば、このようなプランは許されません。一方、形式的に参議院をつぶすだけという弱い意味であれば、このプランも認められることになります。

3.まとめ
こんな感じで、今季の高校論題はいろいろと解釈の余地がありそうだということです。
ただし、論題を策定された方々は、きっとこういうところで不毛にもめることを望んではいないのだと思います。選手の皆様におかれましては、現在二院を置いて二重に審理をしていることの意味、それを一院に変えることの意味というのを素直に考え、説得的に議論されることを期待しております。
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