愚留米の入院日記
日当たり良好の某法科大学院既習病棟を退院した法務博士の日記。しかし内容はほとんど趣味のディベートの話
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ジャッジ講習会教材の公開と東海大会中学の部の感想
去る7月8日に全国教室ディベート連盟東海支部で催されたジャッジ講習会の講師を務め、10日にはディベート甲子園東海地区予選(中学の部)でジャッジをしてきましたので、その感想などを書くことにします。

まずはジャッジ講習会ですが、これはいわゆるNADEのジャッジマニュアルを用いた初心者向けのものではなく、経験者を対象として、証拠資料の評価方法やプランとメリット・デメリットの関係など、ルールの解釈やディベート理論の理解に関わる問題を検討するという内容です。ガラス棟をはじめとする全国の法科大学院病棟で行われている一般的な治療方法にならい、事例に即した設問を通じて問題を考えるという趣向です。
講座で用いた教材とその解説を公開しておきますので、興味のある方はご覧になってみてください。一応断っておきますと、教材の問題が全て分からなくても普通の試合を判定する分には支障ありません。

2010年7月開催ジャッジ講習会の教材



そのほか、7月には某学校でディベートの初心者向け講習の講師を務めたりもしましたので、その時の教材などに加筆修正したものを後日公開することも考えています。が、どうせならそれなりの内容にすべきと考えていることもあり、公開時期については今のところ未定です。まだその時と場所の指定まではしていない…ということです。

ここからは中学予選の感想です。全部で5試合主審をしたのですが、選手の皆さんが楽しそうにディベートをしているのが印象に残りました。講評のスピーチについても、試合をした選手だけでなく観戦していた選手や親御さんなどもリラックスしながらきちんと聞いてくださり、話していて楽しかったです。もちろん他の大会でもそのようなことはあるのですが、特にそういう印象をもったということです。
では、以下具体的な議論に即して、気づいたことをいくつか書いておきます。

1.それは論題を実行するに足る理由なのか?
今回一番びっくりしたのは、肯定側で外来種流入の問題を論じているチームが多かったことです。生態系への影響や感染症のリスクなど、細かい部分では違いがありましたが、見た5試合のうち3試合で、そのようなメリットが出されていました。
このような議論が成り立たないとか、重要でないとは言いませんが、個人的には、今季論題において外来種の問題を展開することには困難があると思います。事実、僕が見た外来種系メリットを論じていたチームはいずれも予選敗退していました。そこで、外来種の問題を今季論題で論じにくい理由について、簡単に説明しておきます。

外来種問題に限らず、メリットを説明する上で重要なことは、そのメリットと論題の関係を明らかにすることです。今季の中学論題は「ペット売買の禁止」であって、「外来種動物輸入の禁止」ではありません。それにもかかわらず、外来種の問題を提起してペット売買の一切を禁止する(秋田犬など日本の種も含めて!)ことを主張したいのであれば、その理由をきちんと述べることができなければなりません。
僕が見た中でこの点について最も頑張っていた議論は、外来種輸入の目的の88%がペットとして販売するためである、という証明をしていたメリットでした。しかし、本当ならば、これに加えて「ペットとして珍しい動物を売ることを許すことで、珍しい外来生物への需要が煽られ、輸入が促進される」といった説明がされるべきでした。それはなぜかというと、プランにより売買を禁止したところで、輸入が禁止されていないのであれば(おそらく一定の動物については規制されていると思うのですが…)、海外で買って輸入したりすることは妨げられないからです。ですから、海外から持ち込もうとする動機そのものと、国内での売買を許していることとの関係が論じられて初めて、国内でのペット売買を禁止すべき理由が成立するということになります。

では、否定側はこのことをどうやって指摘するのか。プラン後も輸入は可能である、といった解決性の攻撃はもちろん可能ですが、普通に考えれば、一番効果的な反論は「だったら危険な種の輸入だけ禁止すればいいじゃん」ということになります。しかし、ディベート甲子園ではカウンタープランがないので、この種の反論は難しい…ということで、少し頭を遣う必要があります。
外来種ケースについて僕が見た試合で一番よく頑張っていたのは、ペット売買禁止から一般的に出るデメリットを論じた上で「外来種の問題のためにペット全部の売買を禁止するのはやりすぎだ」と反論していたチームです。これは、比較の問題として、メリットではペットのうちごく一部のリスクだけしか論じていないのに対して、デメリットでは論題によって広範囲に問題が生じるとした上で、メリットは論題を肯定するに十分な理由を備えていないということを意味するものと捉えられます。カウンタープランの議論は「そんな小さな問題はカウンタープランで解決するのだから論題は不必要」というものですが、上で見た反論は「そんな小さな問題のために論題のような大げさでデメリットの大きな政策を取るのはおかしい」というものです。
このように、デメリットが「ペット売買」という広いところから出ていることを強調しつつ、メリットが一部のペットについてのみ論じているにすぎないということを指摘することで、メリットと論題の関係を否定することが可能だと考えられます。

2.バランスよく議論を作ろう
ある程度準備が進んだチームでは、立論が充実しており、多くの具体的事例などから説得的にメリット・デメリットを説明しています。しかし、そのような議論についても、本来立論で証明すべき内容との関係でバランスが悪く、自分たちがたくさん資料を持っている部分に集中して議論を展開しがちなところが見られたりします。ある程度レベルが高くなってきたら、バランスの問題を意識するようにすると議論がぐっとよくなります。

例えば、今回の大会で見た中で群を抜いて優れた議論を展開していたのは東海中学校でしたが、バランスの点ではまだまだ改善の余地があります(以下、具体的な議論について言及しますが、前に述べたとおりそのことは妨げられないと考えていますし、彼らはどうみても予選と同じレベルの議論で満足するようなチームではないので、遠慮しないことにします)。
東海中の肯定側立論では、オーソドックスな殺処分の問題について、売買対象としてペットを商品化することによる問題を詳細に検討していました。その一方で、プラン後それがどうなくなるかという解決性については少し説明が薄く(これには構成上の問題もある)、また重要性については感想文レベルの内容しか付されていませんでした。まぁ、ペットが虐待などされているというのは特に証明がなくてもかわいそうな話として受け取れますし、彼らは第一反駁以降の展開も非常に優れているので、今のままの立論でも全国優勝できなくない気がするのですが、聞いただけで勝てそうにない「強い立論」かどうかという視点からすると、バランスの点で否定せざるを得ないということになります。

彼らの議論の強みは、商品として扱うことがペットへの虐待・殺処分を生むのだということを具体的かつ詳細に述べることで、論題との極めて強い関連性が示されていることです(ついでにいうと、おそらくそれをある程度高いレベルで意識的にやっている点に、中学生離れしたチームとしての強さがあります)。しかし、普通に考えれば、「ビジネスとしてやるとまずい問題が起こるというのなら、我々は自由売買を否定して物々交換の時代に戻る必要があるのか?」ということになってしまいます。現に、食料品について、ビジネスの負の側面として産地偽装などの問題がありましたし、その他「悪徳業者」は金の儲かるあらゆる分野に存在します。
もちろん、ビジネスというだけで全ての存在を否定することは不当です。では、ペット売買についてビジネスとしての側面を否定すべき理由(これが今季論題の本質というべきです)はなんだろうか…という問題に答えるには、現状の問題の説明たる内因性の議論に加えて、重要性の議論が必要とされます。例えば、ペットという生き物については消費者と独立して商品そのものに保護すべき利益(動物の権利など)があるから、特別に考えるべきだという主張がありうるでしょう。さらに深く突っ込むなら、そもそも生き物をペットとして人間の傍に置くということ自体が当然には認められるものではないのだという議論もありうるところです。

このような議論を盛り込むとボリュームが厳しいということであれば、他の要素(内因性の議論など)を、支障の出ない範囲で外したり、反論に回したりすることが求められます。
ある程度高いレベルになると、必要性の観点から議論を精査し、言いたいことを我慢するということが大切になってきます。その際には、個々の議論としての強さだけでなく、試合全体の中でどれだけ求められる議論かという観点から、議論を選択する必要があります。これはなかなか辛い作業でもありますが、そのレベルで準備できているということはそこまでの準備が充実していることの証であり、またディベートで最も決断力を要求される、ある種幸せな作業なのだということができます。これは中学生だけでなく、高校生にとっても、到達すべき一つの目標点ですから、そのような域に至れるように、一通りの議論について早くプレパを済ませましょう。


以上が今回の大会での主な感想です。
高校論題についてもいくつか考えるところはありますが、それは来週の高校予選を見た上で改めて書くことにします。
コメント
この記事へのコメント
九州大会見てきました。
中学は2試合しか見ていませんが、ぐるめさんのおっしゃっている外来種にしても、他のものにしても、「ペットの売買を禁止する」ということからのプロセスの立証が非常に甘かった、という印象です。
最低でも「商品であるという事実が」現状の問題点をおこしている」くらいの立証はほしいですね。
2010/07/12 (月) 23:17:39 | URL | 栗子 #-[ 編集]
大会お疲れ様でした
>栗子さま
そうですか。論題との関連性(内因性の分析)はなかなか難しいもので、JDAで名を上げているような選手でも不十分だったりするようですが(笑)、全国大会を目指す上では中学生にも是非頑張ってほしいところですね。
個人的な感触としては、それなりに準備の進んだチームでは、肯定側ではある程度論題の特徴を意識した議論作りが出来ているように思います。むしろ否定側において、肯定側の議論を積極的に否定できるようなデメリット(の深刻性)を作るのが難しいようなので、そのあたりに期待したいところです。
2010/07/13 (火) 03:21:04 | URL | 愚留米@管理人 #tX1BiP8k[ 編集]
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2010/07/17 (土) 16:13:07 | | #[ 編集]
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